2011年11月03日
カラヤン&ウィーン・フィルのブルックナー:交響曲第8番&第9番&テ・デウム(1985年DVD)
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カラヤン晩年の美しい、彼岸の花のようなブルックナーである。
交響曲全集を残したとはいえ、カラヤンは根っからのブルックナー指揮者という訳ではなく、第7番、第8番、第9番そして《テ・デウム》といったように、ブルックナーが真に芸術的香りと深い人間性を獲得し作品の奥底に神秘的あるいは宗教的情感を盛り込むようになった傑作にのみに情熱を捧げてきた。
しかもそれが晩年になるに従いカラヤンを虜にしてきたのは興味深い。
このカラヤンのウィーン・フィルとのDVDは、カラヤンがウィーン・フィルからマーラーの官能美さえ思い起こさせる耽美的な美しさを引き出しているだけでなく、信じられないような迫力のある名演で、すべてが厳しく聴き手に迫ってくる。
また、洗練された中にも何処かオーストリアの民族的な要素を感じさせる素朴な味わいが見え隠れする演奏でもあり、最晩年のカラヤンがウィーンへと回帰したのが良く分かる内容を持っている。
カラヤン晩年のブルックナーは、研ぎ澄まされた無心の境地というべきで、ムーティが「神の声を聴くようだ」と評したのも、むべなるかなと思わせるほどの美しさである。
ウィーン・フィルのサウンドをひたすら磨き上げ、完璧なアンサンブルを実現させることで、ブルックナーの神髄に到達したのである。
余りに人工的と評されるかもしれないが、人間の力でここまで美しい音楽を奏でられるというのは、何と凄いことなのかと改めて認識させられる。
ひとつひとつの音符をかみしめるように、穏やかに、しかし気高い志をもって演奏されたブルックナーで、その気品あふれる美しさに心洗われる究極の名演である。
ウィーン・フィルもカラヤンとひとつになった感動的な演奏を聴かせており、こぼれるような情感の優しさと祈りにも似た澄明さをたたえている。
ベルリン・フィルとのスタジオ録音(CD)もきわめて優れた演奏だが、やはり映像を通して見る迫力は音だけのものより段違いに大きい。
特にライヴ収録なので、第8番、第9番ともに第1楽章の最初のトゥッティからいきなり気合を入れてウィーン・フィルを力強くドライヴして行き、最後に向かって徐々に緊迫感を高めながら、一本の筋を通して、壮大なドラマを巨大なスケールでまとめ上げて行く様は、見る側にも非常な緊張感を要求する。
ウィーン・フィルも弦の甘美な音色を生かし、柔軟な表現でカラヤンの多彩なブルックナーの世界を築き上げて行く。
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