2010年05月21日
ハイフェッツのシベリウス:ヴァイオリン協奏曲(+プロコフィエフ、グラズノフ)
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ほとんど無数といってよい録音を残したハイフェッツだけにすぐれた録音も数多いのは当然のことだが、聴くたびに新鮮な感動を覚え、折にふれて取り出して聴く録音というのはそれ程多くはない。
このシベリウスの協奏曲は、その特別な何枚かのディスクの中でもトップにランクされるべき名演である。
長年弾き込んできたうまさのあらわれた演奏で、曲の内容をしっかりと把握した、確信にみちた解釈にひかれる。
いくぶん淡白な色調だが、その力強く豪快な表現は、この人ならではのものだ。
カップリングされたプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番も、スタイリッシュな中にも強い精神の集中力を感じさせる優れた演奏だが、反面アイロニカルな味わいには欠ける。
これに対してシベリウスを弾くハイフェッツは、まさに唯一無二の存在である。
出だしの何という艶やかさ、滑らかさであろう。ヴァイオリンという楽器の魅力と表情のすべてがそこに集約されている。
技巧面でもまさに妙技の極である。
フィンランドの自然の厳しさとか民族の歴史に根ざした国民性といった文学的な表現を持ち出す余地もないほど、彼のヴァイオリンの存在感はきわだっている。
男性的な力強い響きと安易な感傷を拒絶する強靭なテクニックは、ほかの何物にも頼ることなくこの曲の背後に横たわる精神の底知れない広がりと深さを見事に描ききっている。
それはまた、遅れてやってきたこの2人のロマン主義者の魂と魂の貴重な出会いが生みだした、演奏という行為の一つの理想的な姿である。
プロコフィエフも作品のロマンティシズムと技巧の冴えを最も洗練された姿で示しており、第2楽章の懐かしいまでのニュアンスは最高だ。
グラズノフは表現の幅がまことに広い。
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