2010年02月28日

ヴァント/ザ・ラスト・レコーディング


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ヴァント&ベルリン・フィルのブルックナー「ロマンティック」は文句なく素晴らしい。が、同じ曲の、まったく違う意味で素晴らしい演奏をヴァントはもうひとつ残してくれている。彼が死ぬ前、最後のコンサート・シリーズで演奏したときのライヴ盤だ。オーケストラは北ドイツ放送交響楽団。

頭の部分をちょっと聴いて、まず「あれ?」と不審に思う。あのヴァントならではの精密感がない。緊張感がない。安定感がない。やはり老齢ゆえ、くたびれてしまったのか。

その代わり、明るい。不思議に明るい。

この演奏の聴きどころは、第1楽章の後半以降から始まる。音楽がだんだんミステリアスになってくる。もう、かつてのヴァントのように、考え抜いた音を厳格に配置するといった強い音楽ではない。音は、考え抜いてそこに置かれるのではなく、飄々と鳴っている。

第2楽章は驚くべき静粛さを持ち、まるで静かな和室で墨絵を観賞しているかのようだ。

あらゆる音に愛惜がこもっている。オーケストラがひとつの楽器として演奏している。誰も、どの楽器も突出しない。沈黙の深さにも打たれる。

これこそ、生命の最後の最後でなければ演奏できない音楽だ。こんな音楽を聴いていると、時間が止まってしまう。

第4楽章のコーダも感動的だ。力がすっかり抜けている。力みはまったくない。金管楽器がよけいな表情もなく演出もなくゆっくり上昇するだけで、なぜこれほどまでに澄み切った切々とした音楽になるのか。

ヴァントがこんなふうに演奏したことは、今までなかった。本当に最後の音楽という感じがした。

このとき、前半にはシューベルトの交響曲第5番も演奏された。シューベルトはヴァントのお得意の作曲家だった。

この第5番も、最晩年とはいえ軽快なテンポで、しかし急ぎすぎず、各部分の意味を明らかにしながら進んでいく。

第2楽章など、まさに黄昏の美しさというほかない。幽玄という言葉がふさわしい。

このブルックナーとシューベルト、大芸術家の白鳥の歌といって、まったく過言ではないだろう。

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classicalmusic at 12:45コメント(0)トラックバック(0)ヴァント | ブルックナー 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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