2010年05月08日
プレヴィン&ロンドン響のラフマニノフ:交響曲第2番(完全全曲版)
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現在ではスタンダードな名曲の仲間入りをしているが、再評価のきっかけになったのがこの録音で、この曲の真価を広く知らしめるのに貢献した名盤。
この曲はカットして演奏される慣習が今も残っているが、これは完全全曲盤で、プレヴィンとロンドン響の傑作のひとつである。
爛熟したハプスブルク王朝を思わせる一大ロマン叙情詩といった雰囲気を持つこの曲は、プレヴィンが得意中の得意とするナンバー。
ロンドン響との蜜月時代に録音されたこの演奏には、現在の彼の演奏にはない艶っぽさと強烈なロマンとエネルギーのほとばしりがあふれるばかりで、吹きつけるようなロンドン響の弦の高まりが圧倒的だ。
全体に実に豊かな情感を持った感情豊かな演奏で、特に奇数楽章の表情にはプレヴィン独自の魅力がある。
広大なロシアの大地をイメージさせる第1楽章、こぼれるようなロマンティシズムにあふれた第3楽章、情熱的なフィナーレなどなど、聴きどころは満載だ。
そして全体にいくらか楽天的な印象を与えるのがすぐれた特色であり、弱点でもあるが、その評価は聴き手によって異なるだろう。
モスクワで演奏した際にはセンチメンタルな歌わせ方で女性の聴衆を泣かせたというエピソードも、心のひだに訴える音楽家プレヴィンの真骨頂なのである。
録音は色褪せてきたものの、安定した解釈と温かみのある音楽は今なお価値が高い。
ラフマニノフの交響曲第2番の愛好者は、プレヴィンに足を向けて寝ることはできない。
なぜなら、「長すぎる」「甘ったすぎる」「締まりがない」などと非難され、演奏ではカットされるのが日常的になっていたこの交響曲を、プレヴィンは元に戻しただけでなく、完全全曲版でなくてはこの作品の本質は味わえないと先駆的名演を聴かせてきたからである。
そこに解釈の緻密さ、演奏家としての美学と責任感があることは言うまでもないが、作品との強い一体感、音符一つ一つを抱きしめるかのように再現していくプレヴィンの共感に満ちた演奏に耳を傾けていると、プレヴィンとラフマニノフとが互いに求め合う磁気のように強く結ばれていることが納得される。
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