2010年04月25日
リヒテルのシューベルト:ピアノ・ソナタ集(第13番、第14番、第9番、第11番)
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リヒテルが、スタジオ録音をそろそろやめ、もっぱらライヴ盤を出し始めた頃の名盤のひとつ。
リヒテルはもうこれ以上遅くはできないぎりぎりのところまでテンポを落とし、しかも音色美に過剰に依存することもせず、感情表出の深い境地に静かにわけ入ってゆく。
ここではひたすらシューベルトの音楽に沈潜した大家の、年輪を経た円熟した肉声が語りかけてくる。
リヒテルは、シューベルトのピアノ・ソナタを多く録音しているが、とくに第14番は、リヒテルの数々の演奏のなかでも傑出している。
シューベルトが病のため憂愁に閉ざされた頃の産物である、このもの哀しいイ短調のソナタを、リヒテルはゆったりとしたテンポで、しばしば深淵を見遣るような表情とともに奏でている。
きわめてゆっくりしたテンポで、シューベルトの音楽の内面をじっくりとえぐりだしたような表現は、聴いていると、思わずひきこまれてしまう。
ちなみに彼は"愛すべき作曲家"シューベルトの奥に横たわる深いものを、誰よりも早く、そして的確に、探り出してみせたピアニストではなかったろうか。
この演奏の重さと、それにもかかわらず漂っている不思議な澄明さは感動的である。
なお併録されている第13番もたいへんに美しい演奏。
第9番と第11番という、なかば忘れられようとしているシューベルトが20歳頃に書いたつつましい2曲から、リヒテルは豊かな情趣を引き出している。
例によって緩急自在に弾きわけながら、音楽の流れは自然で、しっとりとした情感に満ち、心の底に深く訴えてくる。
第3楽章として作品145のアダージョを併用している第11番も、作品の問題点を感じさせる以前に、ある真実の表現をもった音楽となっている。
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