2010年04月26日
ムーティのリスト:ファウスト交響曲
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ムーティがみずみずしい音楽性で、素晴らしい成功を収めた秀演だ。
ムーティ42歳の時の鬼気迫る演奏である。
ピリピリとした神経が全曲に張りめぐらされており、曖昧なところは何もなく、あくまでドラマティックに、そして神秘的にファウスト、グレートヒェン、メフィストフェレスの世界が描き出されていく。
ムーティが握りしめている絵筆は、インスピレーションと感動に打ち震えているのであり、導き出される色彩も鮮烈かつ過激であり、聴き手は抑制し難い興奮の中で、リストがゲーテ作品に寄せた切実な想いを追体験していくことになる。
ムーティのドラマに対する非凡な感性が、このユニークな交響曲を、卓越した緊張感と豊かな情感のもとに楽しませてくれる。
痛烈で端的、情熱的で鮮やかな色彩感をもち、きりりと引き締まった音楽で、長大な第1楽章から存分に劇的で、聴き手を退屈させることがない。
第2楽章は純音楽的な響きと表情の美しさが特筆され、第3楽章は情緒的にもうるおいがあり、終楽章の堂々とした終結感も聴き手を満足させることだろう。
しかも「グレートヒェン」では室内楽的緻密さで純なる清らかさも描き出すなど、表現の奥行きも深い。
4つの楽章それぞれが、完全にその性格を把握され、対照感をもって描かれているにもかかわらず、そこには一貫した音楽のイディオムが聴かれる。
スケールの大きさや、鮮やかな色彩感もプラスしている。
リストのオーケストラ作品はピアニスト的な感覚で書かれている部分もあって、作曲家が望んだ効果をオーケストラでうまく表現するのは難しいという。
下手なオーケストラでは骨折り損のくたびれもうけになる確率も多そうだが、ムーティとフィラデルフィア管弦楽団はそうした点を難なくクリアーして、この曲に内在するドラマを生き生きと色鮮やかに描き出す。
たとえば、出だしのファウストの主題からして、ムーティは増三和音に秘められたファウストの、自分ではどうしようもない欲求を明らかにする。
随所で旋律美を際立たせ存分に歌わせながらも音楽が停滞することはなく、76分がたちまちのうちに過ぎていく。
ムーティの才能と同時に怖さすら知らしめた記念碑的演奏だ。
ムーティのフィラデルフィア管弦楽団時代の代表的録音として特筆される。
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