2010年05月18日
アシュケナージ/リスト・リサイタル
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《超絶技巧練習曲》を核にしたプログラミングだが、全12曲中7曲のみというのがいかにも惜しい。
この演奏が今ある全曲盤のどれにも勝る素晴らしい出来映えだからだ。
完璧な技巧を駆使しながら、この曲集のピアニスティックな美感をあますところなく表現した演奏である。
技巧を前面に押し立てたりは決してしないが、ここぞという箇所では絢爛たるピアニズムを披瀝して聴き手を存分に楽しませてくれる。
こんなところに彼の人気の秘密があるのだろう。
アシュケナージかベルマンかと聴く側を唸らせるリストで、ここでのアシュケナージの腕の冴えはまったく素晴らしい。
ほとんど凄絶な出来映えで、まさしくここにはヴィルトゥオーゾとしての彼が存在し、華麗さと絢爛さを余すところなく繰り広げている。
その上で、言うまでもなく彼のピアノには技巧一辺倒のところが全くなく、ハッタリ的な匂いもまるでない。
すべからく自然体で、各作品の要所を確実に押さえ、音楽性あふれる地平を作り出している。
聴き手を決して突き放さぬ、それでいて超人的な指運びを通して豪壮に構築してみせるその才能に感激と驚きを禁じえない。
アシュケナージが弾くリストは、すこぶる清純である。
普通リストでは、"豪放にして華麗な"演奏が好まれる。だがアシュケナージのリストは、豪放より精緻と清純を重視する。
いわゆる"リスト弾き"と目されるピアニストとは、決定的に異なる。
けれど頼りない、か弱いリストでは決してない。ただ聴き手にアピールする姿勢が野性的でない。
そのため柄の大きい重量級でなく、中・軽量級のリスト、とのイメージが植え付けられやすくなっている。
崩れの全くない冴えた技巧が生み出す《メフィスト・ワルツ》や《超絶技巧練習曲》には、さわやかな気品が漂っている。
これこそアシュケナージが誇って然るべき持ち味、と考える。
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