2010年05月19日
デュトワのホルスト:惑星
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デュトワが40歳代初めにモントリオール響の音楽監督に就任してそろそろ10年近く、彼がオーケストラを隅々まで掌握した時代の、このコンビの特長と持ち味を典型的に伝える名盤のひとつ。
《惑星》の録音は数多いし、それぞれがかなり水準の高い演奏を聴かせているが、《惑星》に対するイメージあれこれへの模範解答のような演奏で、まるで宇宙が浄化されたような《惑星》。
パワーもあり、響きの美しさもあり、リズムの軽やかさもあり、何よりもとてもファンタスティック。
もちろんオーケストラの巧さもトップ・クラスなので、誰にでも抵抗なく受け入れられる演奏だろう。
最近はマシューズによる〈冥王星〉を加えた盤も登場したが、それはともかく、デュトワ/モントリオール響盤は、原曲によるものとしてはオーソドックスながらヴィルトゥオーゾ的な性格もみせる代表的存在と言える。
オーケストラが明快で充実したアンサンブルを聴かせるが、決してスペクタキュラーな次元にはなく適度の幻想性も具えている。
この曲は、作為的な演出を試みようとすればいかようにでもなる曲なのだが、デュトワの表現はあくまでも正攻法で、精密に楽譜を読み、決して大仰な表現に陥らず、1曲1曲を丹念にまとめている。
例えば〈金星〉〈天王星〉にしても、力まずに各曲の性格をダイナミックに描き上げているし、抒情的で詩味にあふれた〈土星〉〈海王星〉などでは、細部まで神経の行き届いたキメの細かい演出をしている。
つまるところ、各曲ともそれぞれの標題を一切考慮することなく、スコアそのものを隅々まで磨き上げるこのコンビのスタイルに徹した演奏なのだが、それがむしろ《惑星》の音楽が持つイメージ喚起力を最大限に引き出している。
また、このオケの持つ色彩的な音色の美しさがあますところなく捉えられているのも大きな魅力だ。
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コメント一覧
1. Posted by メタボパパ 2010年05月20日 22:25
はじめまして、
ホルストの惑星は様々な指揮者で聴いてきましたが、デュトワが最もカラフルな演奏だと思っています。
譜面が読めませんので、何が正攻法とかは分かりませんが、聴いた感覚なのですが。
貴殿のブログにはプレヴィンやボールドの演奏もお書きになっていらっしゃるようなのでこれからまた続きを読みます。
ホルストの惑星は様々な指揮者で聴いてきましたが、デュトワが最もカラフルな演奏だと思っています。
譜面が読めませんので、何が正攻法とかは分かりませんが、聴いた感覚なのですが。
貴殿のブログにはプレヴィンやボールドの演奏もお書きになっていらっしゃるようなのでこれからまた続きを読みます。
2. Posted by 和田 2010年05月21日 15:08
メタボパパさん、コメントありがとうございます。
カラヤンが採り上げたということで、結果的に「惑星」はポピュラー名曲の仲間入りを果たしました。
それ以前のこの曲といえば、ボールトやストコフスキーが手がけた、体の良い珍曲に過ぎませんでした。
だがあのカラヤンが、しかもウィーン・フィルを指揮して録音しました。きっと素晴らしい傑作に違いないと、1960年代の純粋なファンは思い込んだのでした。
そして「惑星」は世界中の指揮者が、喜んで採り上げる唯一のイギリス音楽の地位を獲得しました。
この一例を思い起こしてみても、いかにカラヤンという名が、凄まじいブランド力を持っていたかがわかるでしょう。
恐らく当時のレコード・ファンは、カラヤンの新曲くらいに受け止めていたのでしょう。
カラヤンが採り上げたということで、結果的に「惑星」はポピュラー名曲の仲間入りを果たしました。
それ以前のこの曲といえば、ボールトやストコフスキーが手がけた、体の良い珍曲に過ぎませんでした。
だがあのカラヤンが、しかもウィーン・フィルを指揮して録音しました。きっと素晴らしい傑作に違いないと、1960年代の純粋なファンは思い込んだのでした。
そして「惑星」は世界中の指揮者が、喜んで採り上げる唯一のイギリス音楽の地位を獲得しました。
この一例を思い起こしてみても、いかにカラヤンという名が、凄まじいブランド力を持っていたかがわかるでしょう。
恐らく当時のレコード・ファンは、カラヤンの新曲くらいに受け止めていたのでしょう。