2010年05月16日
スターンのチャイコフスキー&メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(新盤)
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チャイコフスキーは、スターンが57歳の時に残したこの協奏曲の3回目の録音で、一段と円熟味を加えた演奏は、スケールゆたかで味わい深い。
円熟の境にあったころのスターンの豊かな音楽性が、あますところなく発揮されている演奏である。
スターンのヴァイオリンは悠然としていてスケールが大きく、しかも熱っぽく荒々しいロシア的情感を、もののみごとに表出している。
第1楽章から表情たっぷりで、ルバートの語り方も上手のかぎり。
心のこもった節回し、弦を絞るような粘着力のあるカンタービレ、いずれもチャイコフスキーの音楽によく似合う。
しかも曲想にしたがって、鋼鉄のような威力から無限のやさしさに至るまでの表現の幅が実に広い。
いわば自家薬籠中の作品であるが、ここでのスターンは正面から作品に対して、すばらしい集中力をもって真摯に演奏を織りなしている。
しかも、共感にとんだ表現を存分に歌いあげながらも、その演奏が決して表情過多になったり、感傷の澱を残すことがないのは、心技体のすべてが充実していた円熟期のスターンならではの余裕であり、懐の深さであろう。
そうしたスターンのヴァイオリンを、ロストロポーヴィチがいかにも力強く情熱的な指揮で、ロシア的な情感をゆたかに支えて、演奏の味わいをいっそう深めている。
メンデルスゾーンの方はかなり内容を抉った表現だ。
遅いテンポから気迫をこめ、ルバートや青白いピアニッシモを多用し、深いものを目指している。
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