2010年08月26日
ヨッフムのモーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク&ハフナー・セレナード
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当ディスクは、すでにポストの面でも、芸風の面でも、悠々自適の境地に達していたヨッフムが亡くなる前年(1986年)に残した録音である。
さすがに老大家らしい、年輪の厚さを感じさせる演奏で、あたかも音楽をあたたかく、ふところに抱きかかえているような感じだ。
豊かで匂やかな音楽に溢れた演奏で、感情の自然な起伏を十全に表現したスケールの大きな演奏だ。
晩年のヨッフムがバンベルク響を振った他の演奏にも共通した衒いのない自然体のアプローチは、決して力むことのない、愛らしさを併せ持った生気溢れる世界を展開している。
だが、古典的な様式感よりは、自在な感情の流れを押し出した演奏だ。
セレナード第7番《ハフナー》では、この曲の明るく祝典的な気分を、ごく自然に表出しているのが特徴で、急所をビシッとおさえながら、あとは楽員の自発性にまかせてのびのびと演奏させている。
ことにロンドの楽章は上品で魅力的だ。
《アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク》の演奏は、中低域にもたっぷりと歌わせた中庸を心得た音響バランスで、とうとうと流れる音楽が自然で好ましい。
無理なところの一つも無い演奏の合間から、時折、愛らしい表情が浮かび出るのも、このコンビならではの魅力だ。
特に第2楽章の優しさは絶品だ。
ヨッフムの場合、その晩年期の来日公演時の印象があまりに強烈で、渋い老巨匠のイメージが強いものの、このセレナード第7番《ハフナー》では、第1楽章の主部で顕著なように、引き締まったテンポ設定を行なっており、豊かな風格が漂っているのが印象的だ。
しかも、音楽に対峙する姿勢はいささかもぶれることなく、自然な流れと愉悦感にあふれた名演が収録されている。
名コンビぶりをうたわれたバンベルク響のあたたかな響きを活かしながら、移ろいゆくハーモニーの綾を存分に引き出していく手腕も実に見事である。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2020年04月23日 10:21

2. Posted by 和田 2020年04月23日 14:49
ヨッフムの晩年の手兵はバンベルク交響楽団でした。このオケを指揮してモーツァルトの後期交響曲などを録音しました。これもそのひとつで、きめの細やかな、深い音楽性にあふれた演奏となっています。80代も半ばに達したこの老大家の指揮は、驚くほど精緻でありながら、オペラを得意とした彼らしい生き生きとした表情がすばらしく、バンベルク響も親密なアンサンブルでこれに応えています。モーツァルトの大家であったベームがベルリン・フィルやウィーン・フィルといった超一流オケを指揮した録音は縦の線は揃っていて立派ではありますが、指揮が硬直化しているというか四角四面なので、個人的にはヨッフムの暖かく柔軟性に富んだ演奏を愛聴しています。演奏内容については本文に書いた通りで、音質も良く、ヨッフム・ファンなら是非とも聴いて欲しいディスクです。