2010年05月05日
ゼルキン&小澤のベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集
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非常にオーソドックスな演奏だ。
ゼルキン80歳前後の演奏だが、実にのびやかに、冴えたテクニックでひきあげていてすばらしい。
正攻法の、実に素直な表現を行いながらも、それぞれの楽曲の持ち味を生かした演奏は、さすがに、現代屈指といわれた大家といえよう。
ゼルキンのタッチは明るく、響きが軽くなっているが、テクニックに衰えもない。
また、以前のように思いつめたような激しい集中力が弱まったかわりに、精神の自由な飛翔が支配する。
「真実一路」という言葉がある。
21世紀を迎えた今日にあってはあまり声高に語られることも少なくなってしまった言葉だが、R・ゼルキンというピアニストを語るには、この言葉がなによりもふさわしい。
ここにきくベートーヴェンの協奏曲においても、彼のひき出す音はグラマラスな魅力をもっていたり、やわらかな美しさをもっているという類のものではない。
しかし、その音は真実なるものを求めてやまないような一途な姿勢に貫かれており、きく者の耳に喰い込んでくる。
真面目であるということが必ずしも最高の評価を受け難くなりつつある今日の精神状況にあって、R・ゼルキンのような存在は逆に大きくクローズ・アップされてしかるべきだろう。
なかでも後期の3曲が見事で、第4番などは音楽自体の深みとゼルキンの芸風が一致して最も上出来だ。
小澤の指揮も堂々として、緩徐楽章での威厳は、彼が巨匠への道を歩んでいたことを示している。
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