2010年08月13日

ブレンデル&ハイティンクのベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集


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ブレンデルは高度な技術に裏づけられ、曖昧さのない理詰めな音楽性を誇るピアニストである。

とりわけ、ここにきく『ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集』が録音された1970年代には、その傾向が顕著であった。

第1番から第5番にかけてのいずれの演奏においても、彼のピアノは大いに雄弁で、必要な音があるべきところにきちんと収まっている。

ベートーヴェンの音楽におけるメタ・フィジカルな要素を追い求めたというより、むしろ、整合性のとれた論理性を追求した演奏内容だ。

指揮者ハイティンクも力のある伴奏をしているが、この後、急速に成熟した彼だけに、80年代、90年代に録音がなされていれば、と思わせる要素も、ここには残されている。

ブレンデルの旧盤で、新盤があまりにも素晴らしいので影が薄くなった観もあるが、特に第1番は名演のひとつに数えられよう。

フィナーレはブレンデルの個性が曲を上回るシーンがあるが、第1楽章の敏感な愉しさは出色ものだ。

驚くべき弱音、宝石のようなタッチ、弾むリズムが最高。

第4番も美しい演奏で、透明なタッチを堪能させつつ、細部まで緻密に音化し、しっとりと心に迫ってくる。

第3番も同じスタイルで、ベートーヴェンが書いた音符がそのまま聴き手に語りかけてくるような、じっくりとした演奏だ。

ハイティンクの指揮も見事で、第4番は心にしみ通ってくるような演奏だし、第3番での充実感も彼のベストのものといっていいくらいだ。

「皇帝」は出だしの音を聴いた瞬間に、豪快で熱気にあふれたブレンデルの演奏に圧倒される。

技巧的にまったく落ちこぼれがないのはもちろん、音の粒もよくそろっていて美しい。

ハイティンクのバックも大変良く、シンフォニックな曲の運びは心を熱くさせる。

全体に若さがあふれ、「皇帝」の名にふさわしい、堂々たる演奏だ。

「合唱幻想曲」も壮麗で、聴いていてこれほどぐいぐいひきつけられる演奏というのも珍しい。

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classicalmusic at 12:47コメント(2)ブレンデル | ハイティンク 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2020年04月11日 10:13
4 惜しくも引退してしまいましたが,素晴らしいピアニストでしたね。このウイーン育ちのマエストロは特にロマン派の音楽に優れた美観を発揮し,ベートーヴェンの協奏曲もその例外ではありません。最初のハイティンクとの共演盤は整然とした美しさがあり,ハイティンクの伴奏も秀逸です(ハイティンクはアバドと並んで伴奏者としては卓越していますね)。新盤というのはラトルとの共演盤の事でしょうか。ブレンデルはレヴァイン&シカゴ響とも共演しており,3回全集を録音しています。私はこのレヴァインと共演した第4番の完熟した美しさに度肝を抜かれました。アバドと共演したシューマンのピアノ協奏曲と並んで,彼の最高傑作だと思っています。3回の全集録音といえばアシュケナージもそうでしたね。私は彼の全集でも2回目のメータとの録音がお気に入りです。ブレンデル,アシュケナージ,ギレリス,ツインマーマン,グルダ,内田,シフどの全集を選ぶかファンは大いに迷う事でしょう。おっと私が現在滞在しているチリの名ピアニスト,アラウのC. デイヴィスと共演した全集も見逃せません。こちらもいぶし銀の第4番が特筆した出来でした。
2. Posted by 和田   2020年04月11日 14:13
アルフレート・ブレンデルというピアニストの人と芸術を知ろうとするならば、恰好の素材が私の手元にあります。それはBBCが1992年にフィリップスと共同で制作した「ブレンデル・オン・ベートーヴェン」というタイトルの映像です。ブレンデルは、ゲーテがベートーヴェンの人柄について述べた言葉のなかにある「集中力」「エネルギー」「インニッヒカイト(優しく心がこもっていること)」をベートーヴェンの作品を理解するためのキーワードとしながらこの作曲家の傑出した特質を解明してゆきます。その構成原理の比類ない有機性をピアノで実例を示しながら論証するとともに、作品が個別にもつ「性格」や個々の楽節の「心理」というものを重視します。この「性格」と「心理」の理解にブレンデルは、師エドウィン・フィッシャーの言葉をはじめとする自らの豊富な音楽体験のほか、ベートーヴェンの逸話や伝記、研究書や資料、さらにはゲーテやノヴァーリスらの文学作品などから得られた膨大な知識を駆使して思索的に近づきます。
ここでの話は、むろん直接はベートーヴェンについてなのですが、作品と作曲家へのこうしたアプローチは音楽へのブレンデルの関わり方全般の特質をよく示していると思います。演奏は、技術や単純な意味での読譜力だけから成り立つものではなく、技術的な作品掌握、これは当然の前提として、それに心と頭、あるいは知情意のすべてを尽くして成し遂げられる作品の「性格」および「心理」の理解が加わり、このふたつが重なり合って初めて高度な作品解釈に到達するというのが、おそらくブレンデルの演奏解釈の奥義なのでしょう。
ご指摘の3度に亘るベートーヴェンの協奏曲全集もですが、ベートーヴェンのソナタ全集への3度に亘る徹底的な集中期も見逃せません。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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