2015年06月13日
モントゥーのドビュッシー
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モントゥーのドビュッシーやラヴェルは素晴らしい。
柔らかい音色感は、生粋のフランス人でなければ表現できない。
当盤の収録曲の録音時には80歳半ばだったモントゥーであるが、熱烈なラヴコールを受けて、首席指揮者に就任したロンドン響から、気品に満ちた響きと芳醇な詩情を引き出すことに成功。
どちらかというと、軽い、さわやかな響きをもったオーケストラから、こういう音を引き出したモントゥーの力量は偉大である。
オーケストラを完全に自分の楽器にしているのだ。
ここに立ちのぼってくる香りは紛う方なくフランスのもの。
自然体の魅力にあふれ、とりわけ、《映像》の「イベリア」で顕著なように、聴き手の心の皺をのばすように、音楽が豊かに息づいているのが好ましい。
「イベリア」の音の輝きと、作為のない音楽的表現は驚くべきで、「夜のかおり」の官能的な夜の空気のつくりかたなど絶妙である。
その明るい陽ざしと手応えを同時に感じさせてくれる芸風は、実に得難いものであると思う。
全体に一つ一つの音とその動き、そしてそれが生み出す響きに深い質感と温もりがあって、それが素敵な芳香を撒き散らしながら、エレガントでしかも芯の通ったドビュッシー像を作り上げている。
《牧神の午後への前奏曲》に漲る夢幻的な詩情も見事である。
ドビュッシーの音楽本来の格調の高さと自然体の魅力に再度目を向ける意味でも、また同時にこの前奏曲のもつフランス的な感性の原点に立ち帰る意味でも、モントゥーの《牧神》をここで確認しておきたい思いである。
ふくよかな官能性と静謐な香気、自然でいて気品とニュアンスに富んだこうした演奏こそが、この作品に底流する美しい夢幻的な詩情を余すところなく描きあげるものではないだろうか。
巨匠モントゥー晩年の熟成の境地が万遍なくにじみ溢れている名演であり、やはりひとつの忘れ難い記録として掲げなければならないディスクであろう。
その音楽づくりを通じて、このフランス出身の長老指揮者が、人生と音楽を愉しむことを知っていたことを、如実に感じ取ることができるディスクになっている。
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