2010年11月27日
リリングのバッハ:宗教声楽曲集
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「ロ短調ミサ」は流麗なバッハ演奏で、かつてリヒターが聴かせたような、緊張の極限にあって、魂の救済を天に叫ぶような痛切さはない。
その代わり、穏やかな心とやさしい眼差しがある。
いかにもリリングらしい、こまやかな心遣いが細部にまで感じられる。
バランス設計も見事で音楽の流れに淀みがない。
合唱は、リリングのバッハをよく理解した緻密な歌いぶり。合奏団も、ややイタリア風のバッハを伸び伸びと演奏している。
「マタイ受難曲」も「ロ短調ミサ」と同様に、温かい血を通わせたリリングのバッハ演奏。
バッハを生きた現代の音楽としてとらえ、従来のリゴリズムから解放された自由な世界がひらけている。
テクストの分析も、音とのかかわり合いの中で、見事にその核心を突いているが、この演奏からはリリングの考えと、作品の持つ強烈な訴えがなかなか伝わってこない。
水準の高い演奏だけに、今一歩の実在感の不足が惜しまれる。
「ヨハネ受難曲」でリリングは冒頭から緊張力にあふれた音楽を紡ぎ出す。これまでの種々の録音にも増して、今回は劇性を全面に押し出しているのである。
そして合唱の扱いにも独特の斬り込みの深さを見せ、第21番「私たちに救いをもたらし」はオリジナル楽器奏法をなぞるような唱法。
ただ福音史家を歌うシュライアーはやや表現過剰。F=ディースカウも声の衰えが著しい。
女声陣の中ではオジェーが特に後半の歌唱で充実した歌を聴かせる。
リリングの伸びやかで温かい音楽作りは、「クリスマス・オラトリオ」にもよく合っていて、どのナンバーでも流麗なバッハを聴かせてくれる。
4人の独唱者も、それぞれがリリングと水も洩らさぬ共働ぶりで立派に歌っている。
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