2010年08月19日
アンセルメのベートーヴェン:交響曲全集&序曲集
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ベートーヴェン=ドイツ=重厚と考える向きには、アンセルメのベートーヴェンなど選択肢のひとつにも入らないかも知れないが、これはまことに傾聴に値する録音であり、広く推奨したい。
アンセルメの演奏を一言で説明するなら「理知の光に照らされたベートーヴェン」と言うことができる。
アンセルメの頭脳によって明快に読み込まれたスコアが生き生きと再現されているのだ。
この辺りは、盟友であったシューリヒトと相通ずる芸風であるが、シューリヒトの方がよりドイツのロマンティストであったと言えようか。
オケの響きは、とても軽やか。
弦の音色は明るく、管もオーボエやホルンを筆頭に鼻にかかったフランス風の音。
それらが、アンセルメの颯爽としたテンポの中で伸び伸びと歌っている。
しかし、決して感覚的、即興的に流した演奏ではなく、不意に訪れる大小のテンポの変化や全体のバランスの妙には油断がならない。
これほど考え抜かれた演奏でありながら、いっさいの理屈っぽさを思わせない点にアンセルメの芸の深さがある。
我々がアンセルメの芸術に打たれるのは、このように怜悧な数学者と熱き表現者の共存する姿に出会うときなのだ。
この全集を手に取る者は、どの作品、どの楽章からも、同じ種類の感動と遭遇することになるだろう。
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