2010年09月01日
ワルター&コロンビア響のベートーヴェン:交響曲全集
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ワルターは、晩年にコロンビア交響楽団を指揮して、多くのレパートリーをステレオ録音している。
フルトヴェングラーよりも10歳年上だった彼の演奏を、かなり良好な音質で聴くことができるのは、そうしたおかげである。
この全集も、1958年から59年にかけての録音で、CD化されて、より鮮明な音になった。
ワルター最晩年の録音で、巨匠は既に80代を迎えていたが、ふくよかで温かい人間性と彫りの深い音楽性で聴き手を魅了する歴史的名演である。
巨匠の偉大な風格を示した演奏である。
ワルターの演奏は、すこぶる老熟した、底光りのするような深い味わいをもったもので、ワルターならではの、優しく、温かく、穏やかな人間性というものが、聴き手にそのまま伝わってくるかのようだ。
温かく、豊かなニュアンスに満ちた心を和ませる表現は、ワルター独自のものだ。
晴朗に歌いながら要所をよく引き締めて格調高く、全集を貫くヒューマンな歌の心はベートーヴェンの本質を表現して余すところがない。
基本的にワルターは抒情の人、歌の人といえ、《田園》交響曲などそうした魅力が類稀な結晶となっているが、《運命》や第7番などでは密度濃い構成力と逞しい推進力をベースに壮麗な音の世界が打ち立てられており、決して好々爺的な演奏などではない。
フルトヴェングラー、トスカニーニらとともに20世紀前半から半ばにかけての指揮界に君臨してきたワルターの至芸は、さすがに芸風に余人の追随を許さぬ風格と存在感がある。
特にロマンティックでみずみずしい第2番と、作品の本質を衝いた表現で聴き手を感動に誘う《田園》は、全曲中の白眉である。
巨匠の芸術から学び取るものは大きい。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2020年04月30日 10:17

2. Posted by 和田 2020年04月30日 12:32
これは、全音楽ファン、ベートーヴェン愛好家に聴いて欲しい全集です。こんなにも瑞々しく、力強く、真摯でいながら愛らしいベートーヴェン全集は稀だからです。ワルターといえば、2番、6番の名演が定評のあるところです。力より愛情、厳しさよりは優美を思わせるワルターの芸風に最も相応しいと、誰もが思うところでしょう。確かにそれは間違いではないのですが、改めて聴き直してみて大きく感じたことは、ワルターの圧倒的な力強さです。それゆえ、一般の評価とは裏腹に奇数番の聴き応えが充分なのです。そして、その充足感は、もちろん偶数番においても変わりません。
ご指摘の3番はワルターとしても最高の名演で、「コロンビア響は小編成で音が薄い」という欠点の微塵も感じられない圧倒的なパワーが充溢しており、衰え知らぬワルターの気合いが凄まじく、第3楽章トリオにおけるホルンの超レガートも美しさの限りです。同曲はシンフォニー・オブ・ジ・エア(元NBC響)とのトスカニーニ追悼ライヴも素晴らしいですね。
ご指摘の3番はワルターとしても最高の名演で、「コロンビア響は小編成で音が薄い」という欠点の微塵も感じられない圧倒的なパワーが充溢しており、衰え知らぬワルターの気合いが凄まじく、第3楽章トリオにおけるホルンの超レガートも美しさの限りです。同曲はシンフォニー・オブ・ジ・エア(元NBC響)とのトスカニーニ追悼ライヴも素晴らしいですね。