2010年09月18日
ゼルキンのベートーヴェン:後期3大ピアノ・ソナタ集
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R.ゼルキンの晩年の演奏には、壮年時代のひたむきな感情移入は薄れているものの、音楽に対する真摯な態度は変わらない。
作品に対する深い畏敬の念と敬虔な精神に基づく解釈は求道者の厳しさを感じさせるが、同時にゼルキンの人間的な円熟は、精神のより自由な飛翔を感じさせる。
ドイツ・オーストリアの古典ものを得意としたゼルキンにとって、ベートーヴェンは主要なレパートリーだったが、録音を発表することに彼自身があまりにも慎重だったため、ピアノ・ソナタ全集の録音は完成しなかった。
しかし、彼のベートーヴェンには名盤が並ぶ。
この最後の3曲のソナタ集は、ゼルキンが84歳のときのライヴ録音であり、ドイツ・オーストリアの伝統的なピアニズムを受け継いだ彼の真摯なアプローチが目を引く。
端正な作りのなかに豊かな情感をこめた演奏であり、この老練なピアニストの深い精神性が示されている。
ゆったりめのテンポにより、落ち着いた語り口で弾き進められているが、そのなかに格調高い美しさが漂い、じっくりと熟成された味わいがある。
このゼルキンのベートーヴェンの演奏は、改めて音楽の表現の世界、そして解釈の領域がいかに広いものであるかを教えてくれる。
彼の作品に向かう態度はまったくの自然体である。
ゼルキンの演奏には、ベートーヴェンの音楽がもつヒューマニズムの精神が、いかなるテクニックによる演技も、今日の聴衆が好む音響効果的なドラマをも無縁なものとしてしっかりと存在する。
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