2010年09月23日
クレーメルのバッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(新盤)
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クレーメルがメロディア盤(1975年)とフィリップス盤(1980年)の後に、およそ四半世紀を経て録音したバッハ。
技巧の難しさに加え、極度の精神集中を演奏家に要求するこれら6曲は、20世紀の独奏ヴァイオリニストたちの関心をずっとかき立ててきた。
だから20世紀後半に活躍したヴァイオリニストたちによる《無伴奏》の名盤は、決して少なくない。
しかし時代が下って現在活動中のヴァイオリニストたちは、先人たちが見せてくれたあの高度の精神集中とその持続を、どうも苦手にしているような印象を受ける。
例外がクレーメル。
研ぎ澄ました感性に基づく細心の声部処理は、見事としか言いようがないが、しかしここではデビュー当時の彼に時折見られた弱々しい表現は姿を消しており、気迫に富んだ演奏が味わえる。
伝統に甘んじることも、精神性を重んじただけの演奏でもない、常に音楽作品とじかに触れ合っているクレーメルらしいバッハだ。
ルーティンや伝統に安住せず、常に創造性豊かな活動を展開してきたクレーメルらしい解釈が示されている。
集中力も十分でときに激しい情熱を迸らせるが、同時に細部におけるニュアンスに富んだ音の運びなど繊細かつ個性的な表現も聴ける。
計算されたヴィブラートやイネガル的なリズム、変化に富んだデュナーミクや多様な色彩、ポリフォニックな横の流れ、ダンスの愉悦等ピリオド奏法の発想を柔軟に取り入れた上で、まったくクレーメルにしかないオリジナリティに富んだ演奏が展開される。
その結果、古楽器やモダンという楽器や様式の違いを超えて、豊かな内容を示しえた究極の名盤となった。
クレーメルが全力投球したディスク。
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