2010年10月06日
アバド&ウィーン・フィルのベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、他
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カンタータ「静かな海と楽しい航海」は繊細な感性と大きな息づかいが同居したアバドらしい表現。
アバド&ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲全集のなかでは「田園」をまず第一に推す。
アバドは、知性と情感の見事な結合を特色とした演奏を聴かせている。
彼の精妙な表現は、物理的な精確さを越えて内的感情のすこぶる自然なあり方をも捉えており、そこでは、知・情・意の十全なバランスが印象深い解釈が示されている。
見事に制御された個性的な演奏で、第1楽章冒頭からゆとりのあるテンポでみずみずしい音楽が歌われ、展開部の高揚も素晴らしい。
第2楽章は葉擦れの音を聴くようなデリケートな感触があり、第3楽章以降も歌にあふれ、アバドの棒のさばきが見事だ。
かなり丁寧にのどかな情景を醸し出そうとする第1楽章と第2楽章。第3楽章以降で大きく音楽を高揚させようというプランが明確に現われている。
第3楽章で雲行きがあやしくなり、雷雨へと移行する第4楽章への運びもよい。
のどかさを取り戻す第5楽章が美しい。
全体に明晰で引き締まった造形で、「絵画的な描写ではなく感情の表現」というこの曲についてのベートーヴェン自身の言葉の真意を見事に突いた、絶対音楽としての格調と様式美に富んだ名演である。
しかも清廉な歌に満ち、加えてウィーン・フィルの美しい響きがなんとも言えない。
ホルンや木管の響きなど、とりわけ「田園」ではウィーン・フィルの演奏は魅力的だ。
合唱幻想曲ではポリーニのピアノが、アバドとの息の合ったコンビを聴かせる。
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コメント一覧
1. Posted by yositaka 2010年10月09日 22:35
私もこれはアバドのとびきりの演奏と思います。いつになくテンポを動かし、ロマンティックなスタイルに傾いています。それがこの曲に似あっている。
テビュー間もないころ、彼はブラームスの2番をベルリン・フィルで録音し、見通しの良さと、構えの大きさを兼ね備えた演奏で、私たちにその名を印象付けたのでした。
この『田園』も同様です。このスタイルをもっと多くの曲で貫けば、彼はもっと早く巨匠になれた、そんな気がするのです。
残念ながら、BPOとの二度目の『田園』に、私はこの魅力を感じません。古楽の流行を横目で見て、演奏スタイルを変化させた彼は、大事な何かを失ってしまったように思えたのです。
テビュー間もないころ、彼はブラームスの2番をベルリン・フィルで録音し、見通しの良さと、構えの大きさを兼ね備えた演奏で、私たちにその名を印象付けたのでした。
この『田園』も同様です。このスタイルをもっと多くの曲で貫けば、彼はもっと早く巨匠になれた、そんな気がするのです。
残念ながら、BPOとの二度目の『田園』に、私はこの魅力を感じません。古楽の流行を横目で見て、演奏スタイルを変化させた彼は、大事な何かを失ってしまったように思えたのです。
2. Posted by 和田 2010年10月10日 03:03
yositakaさん、コメントありがとうございます。
私がアバドを本格的に注目するようになったのは、ヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」の録音からでした。
これは1977年の古い録音ですが、あらゆるイタリア・オペラの中でも最も深い感動を与える傑出した名演で、アバドがスカラ座音楽監督時代の最も気力が充実していた時期に名歌手を揃えてレコードを残してくれたことに感謝せずにはいられません。
アバドはスカラ座を辞任してからしばらく鳴かず飛ばずだったのですが、1999年にマーラーの交響曲第3番をベルリン・フィルとライヴ録音しました。これがバーンスタインとは異なるスタイルながら、超絶的な名演で、アバドがオペラだけの指揮者ではないことを強く印象づけたのでした。
またのコメントをお待ちしております。
私がアバドを本格的に注目するようになったのは、ヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」の録音からでした。
これは1977年の古い録音ですが、あらゆるイタリア・オペラの中でも最も深い感動を与える傑出した名演で、アバドがスカラ座音楽監督時代の最も気力が充実していた時期に名歌手を揃えてレコードを残してくれたことに感謝せずにはいられません。
アバドはスカラ座を辞任してからしばらく鳴かず飛ばずだったのですが、1999年にマーラーの交響曲第3番をベルリン・フィルとライヴ録音しました。これがバーンスタインとは異なるスタイルながら、超絶的な名演で、アバドがオペラだけの指揮者ではないことを強く印象づけたのでした。
またのコメントをお待ちしております。