2010年11月02日
ワルターのモーツァルト:交響曲第25番、第28番、第29番、第35番「ハフナー」
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第25番と第28番と第29番はコロンビアso.(後年の西海岸のそれではなく、ニューヨーク・フィルなどを主体とした団体)、第35番が正規のニューヨーク・フィルによる演奏。
ワルター最盛期の録音なので、演奏はいずれも充実している。
第25番は凄絶と形容したいほどの劇的な熱演で、男性的かつ非常に厳しく、ワルターのロマン主義的な本質を端的に表明している。
両端楽章の迫力はワルター以外例がなく、この曲の疾風怒涛を赤裸々に表出したものといえよう。
第2楽章の歌との対照も見事である。
また、こうした暗い作品を指揮しても、ワルターの場合は、いつも人間的なやさしさがあらわれている。
この曲におけるやさしさも絶品で、ことに第2楽章の演奏など、このオーケストラをあたたかく包みこむようなワルターの呼吸が、楽員ひとりひとりの呼吸とぴったりと合って、あたたかな音楽を生み出している。
ワルターと楽員の心と心がしっかりと結びあった、理想的な名演だ。
第28番も名演で、これだけふくよかに歌うモーツァルトも珍しい。
第29番もはつらつとした表現で、モーツァルトのひとつの理想像を実現している。
「ハフナー」もまた凄まじく、力と輝きにあふれた表現で、全曲が歌と音楽に満ちあふれた輝かしい名演である。
テンポの変動のさせ方や、ベートーヴェンのような楽器の響かせ方など、これこそアンチ・ロココである。
しかも第2楽章では、実にヒューマンなあたたかさを伝えてくれる。
モーツァルトの音楽にひそむ雄弁なドラマに着目した、いかにもワルターらしい演奏だ。
モノーラル録音なので、音の状態はよくないが、精神的な深さに惹かれるディスクである。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2020年07月01日 10:33

2. Posted by 和田 2020年07月01日 12:24
私も29番はワルターが指揮したモーツァルトのベストを争う曲だと思います。第1楽章冒頭の徹底して柔らかい、羽毛のような響きが全曲を一貫し、音色も絶品で、ウィーン・フィルが持つ峻烈さがないのもここでは好ましく感じます。表面はぼけているようで、実は細部まで神経が行き届き、匂うようなニュアンスに溢れています。装飾音の冴え切っていることにも驚かされますが、これこそ本当のモーツァルトと言えるでしょう。少しも背伸びせず、楽に振りながらすべてを言い尽くした幸福なワルターの姿があります。全篇が魔法をかけたように馥郁と香っています。この名人芸的な響きの秘密は丹念な弓使いのせいでしょう。フルトヴェングラーも弓使いには極めてうるさかったそうですが、近頃の指揮者はすべてオケ任せということで、これでは自分の望む音色が得られるわけがありません。