2011年02月15日
ピリスのシューベルト:即興曲集
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《旅人》なんていうタイトルが付けられていて、詩などが添えられているのを別にすれば、実に見事に整った即興曲集だ。
音楽が厳しい美しさに貫かれ、演奏がそれを十全に出しているのだから、それ以上の衣裳は邪魔というもの。
しかし、ピアニスト自身がそうしたくなるほど、これらの曲には深い憂愁がたたえられている。
シューベルトは30代で死んでいるのに、どうしてこんな絶望にとらえられてしまったのだろう?
もっとも、ピリスの演奏の良さは、その絶望感や悲しさを、深く追い求めようとしないところにある。
なるほど詩を書けばこういう効用があるのか。
ぎりぎりのところで軽やかな足どりが維持され、深淵のこちら側に美がとどまる。
シューベルトのピアノ曲は、性格的小品はもとよりソナタでさえ、抒情に流されるのが世の常で、いわゆるロマンティックな演奏に傾きやすい。
女流ピアニストだけでなく、男性ピアニストもそうである。
そうした風潮のなかでピリスは、シューベルトの音楽世界を感覚的に捉えてよしとするのではなく、それを完全に自身の血肉と化した演奏を心掛けているようだ。
この《即興曲集》は、シューベルトに内在している"歌"を、ピリスが慎み深く歌い上げた演奏の典型である。
イヴ・シモンの小説の一部を引用し、シューベルトを旅人にたとえたピリスは、彼の孤独な心の旅をたどるかのように、ひとつひとつのフレーズを深々と掘り下げ、ニュアンス豊かに紡ぎ出す。
スリムな外見を支えているピリスのヒューマンな感情、それが聴き手の心を満たしてくれる。
小粒ながらピリリとした演奏がピリスの身上。その持ち味がたっぷり楽しめる。
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