2010年11月19日
渡邉暁雄&日本フィルのシベリウス:交響曲全集
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渡邉の円熟の芸術をくまなく表した、尊敬すべき全集である。
1981年、日本フィル創立25周年企画「シベリウス連続演奏会」直後に行われたセッションであり、渡邉にとっては、全曲ステレオ録音が世界初となった1962年の全集につづく2回目である。
これらの演奏は非常に説得力が強く、聴き手に深い感銘を与える。
それは何よりも渡邉が作品の本質を、深く静かに見つめ、それを論理的な構成力と全人的な共感をもって表現しているからだろう。
フィンランド人の声楽家を母親に持つ渡邉にとって、フィンランドの民謡は子守歌であり、シベリウスは学ぶべき外国音楽ではなく、半ば自分の音楽なのだろう。
ゆえに、日本のオーケストラを指揮しても、どこにも無理のない自然な演奏に仕上がってしまう。
渡邉と長年辛苦をともにした日本フィルは、まことに献身的な演奏でその棒に応えており、聴きながら清々しい気持ちになる。
全曲ともに、渡邉の人柄の滲み出た心優しい演奏で、とくに「第4」の透明な叙情性が光る。
大言壮語しない「第1」「「第2」にも好感が持てる。
もっとも、全般的に、仕上げが丁寧なわりに平板さが目立ってしまうのが残念で、さらに結晶化されたハーモニーや魂の底から沸き上がるリズム感が求められる。
これは渡邉暁雄の追悼盤であると同時に、わが国の音楽史の一時期を記録した貴重なディスクとして永く伝えたい。
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