2010年11月29日
フルニエ&グルダのベートーヴェン:チェロ作品全集
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フルニエは1940年代にシュナーベルとソナタ全曲を録音しているほか、ケンプとのライヴ録音があるが、このグルダとの録音が最もすぐれていると思う。
なによりも音楽がノーブルで、徹底してカンタービレで歌い、グルダの男っぽいピアノがそれを支える。
両者のコントラストが絶妙。フルニエを聴くならこれ。
フルニエはいつものように貴公子だが、この演奏で面白いのはグルダが紳士になっている点であろう。
この録音の前後にしばしばフルニエと共演したグルダは当時を回想し、フルニエを「あらゆる点で指導者」といい「非常に多くのことを学んだ」と語っているが、フルニエもグルダのいきいきとしたピアノに触発されたかのように感興豊かな演奏を展開しており、呼吸もぴったりと合っていて、演奏全体にみなぎるはつらつとした生気としなやかな気品をたたえた表現も、この両者の共演ならではの魅力だろう。
尊敬してやまないフランスの高貴なる音楽家が放つオーラに触発されたのか、グルダはいちだんと佇まいが美しく、しかも作品全体を見渡した視野の広い演奏を繰り広げており、どこをとっても無理がない。
フルニエがそんなグルダを味方にして風格あふれるソロを披露、幸福感に満ちたベートーヴェンの世界に聴き手を誘い、憩わせる。
なかでも傑出した第5番の演奏。精力的な音楽の第1楽章に続くアダージョ楽章では、ほとんど止まってしまうのではと思わせるほどゆっくりしている。
しかしこれで十分に全体を支えきる。
晩年に近づいた作曲者の内面の深淵を垣間見せる音楽だ。
翌年のバッハの無伴奏チェロ組曲とともにフルニエの芸術の頂点を占める名演といえよう。
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