2010年12月03日
マルティノンのサン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」&フランク:交響曲
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サン=サーンスの交響曲を代表する名作であるこの第3番は、フランス的なエスプリや軽妙で粋な表情の魅力などに溢れた作品であるが、作品のそうした側面を描き切った純粋にフランス風といえる名演には意外に恵まれていないのが実情である。
クリュイタンス、パレー、ミュンシュなどの録音も一流の名演ではあるが、いまひとつ表情が重すぎたりするきらいがあり、作品の明晰でスマートな美を完全に表現しているとはいいがたい。
このマルティノン盤は、そのような中にあって唯一の例外といえる演奏であり、マルティノンのフランス人ならではのダンディで洗練された美学は、この作品のフランス的芳香を最も本来的にリアリゼしているのである。
この作品はフランス音楽にしては珍しく、きわめてしっかりとした造型をもっているが、マルティノンの指揮は、そうした性格を生かしながら、サン=サーンスの音楽の流麗な旋律線を大切にしている。
歯切れのよいリズムで、各部分を明快率直に表現しており、思う存分旋律を歌わせているのも素敵だ。
オルガンにマリー=クレール・アランを起用しているのも魅力。
フランクは現在もなお、この交響曲の洗練度の高さと崇高な空気を隈なく再現した最も規範的な演奏のひとつといいうるものであろう。
そこに余剰な劇性や誇張がまったくなく、終始一貫よどみなく、明快かつ流麗な曲運びが示されている。
そこから立ちのぼってくるフランス的な気品と芳香がまことに素晴らしく、聴き返すにつけ、この交響曲の最も魅力的な姿を見事な手腕で伝えた名盤という感を強くする。
そこには、洗練されたフランス的な感性とともに、作曲家がみせた構成的な意欲が示され、この作品の土壌が明確に描き出されている。
演奏全体の感触はまさに端整で知的、軽妙さと洒脱さを諸所にちりばめたマルティノンならではのもの。
柔軟な表情、典雅な響き、品位に富んだ陰影、しかも作品の本来のスタイルを真正面から捉えた棒さばきである。
正攻法ゆえの極上の美がここにもある。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2020年08月01日 09:59

2. Posted by 和田 2020年08月01日 11:03
フランクがシューマンの影響を受けていたのかはわかりませんが、私も小島さんの評価と一致します。サン=サーンスはフランス音楽の粋とも言うべき洒落た味わいと華麗な美しさに溢れた第3番の魅力を、単なる旋律の表層の美しさのみにとどまらず、演奏全体の引き締まった造型美などをいささかも損なうことなく描出し得た演奏は、フランス人指揮者によるものとしては稀少なものと言えるところであり、諸説はあるとは思いますが、本演奏こそは、同曲演奏の理想像の具現化と評しても過言ではないでしょう。演奏終結部に向けての畳み掛けていくような気迫や壮麗な迫力は、ライヴ録音を思わせるような迫力を有しているとも言えるところであり、本演奏は、様々な名演を遺してきたマルティノンの最高傑作の1つと称してもいいのではないでしょうか。
フランクの交響曲ニ短調は、マルティノンの知的かつ洗練されたアプローチが、重厚で重々しさを感じさせる演奏が多い中においては清新さを感じさせます。もっとも、重厚にして引き締まった造型美においてもいささかも不足はないところであり、いい意味での剛柔のバランスのとれた素晴らしい名演と高く評価したいと考えます。
フランクの交響曲ニ短調は、マルティノンの知的かつ洗練されたアプローチが、重厚で重々しさを感じさせる演奏が多い中においては清新さを感じさせます。もっとも、重厚にして引き締まった造型美においてもいささかも不足はないところであり、いい意味での剛柔のバランスのとれた素晴らしい名演と高く評価したいと考えます。