2010年12月10日

内田光子のシューベルト:即興曲集


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近年の円熟ぶりが特筆される内田光子から贈られた宝石のようなシューベルト。

愛用のスタインウェイをシューベルトと内田自身にとって思い出深いウィーンの、それもムジークフェライン大ホールに持ち込んでの録音。

ピアノの音の純粋な美しさ、心の襞に寄り添うような自然な情緒表現が素晴らしい。

シューベルトの後期のピアノ曲群は、梅毒に罹患後、死への歩みを進めていく作曲者の見た憧れと絶望が、悲しいほどの美しさを湛えつつ描かれている。

このシューベルトの音楽の持つ"魔"と"深淵"を、内田光子はまったく奇を衒うことなく描き出している。

時に伝統的な語法に従い(作品90の1)、時に大胆に自己の発見と主張を押し出し(作品90の4)つつ、内田光子はシューベルトの"真実"を新鮮にわれわれに提示してくれる。

作品に向けられる眼差しが予想を超える緻密さと繊細さをもち、それが演奏のあらゆる細部に反映されて動かし難い説得力となっている。

作品はここまで推敲され、演奏はここまで妥協なく磨き上げられなくてはならぬのかと頭が下がる。

しかし内田光子が傑出しているのは、そうした推敲の痕跡を見せるのではなく、こうして到達された頂きが限りなく大らかで自然な点だろう。

結果としての演奏は不思議なほど伸びやかで、愛すべき歌の心にあふれており、シューベルトならではのロマンティシズムに陶酔する至福を約束する。

聴き手も詩人にする演奏といってもよいだろう。

近年の最も優れた演奏。

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classicalmusic at 04:53コメント(4)シューベルト | 内田 光子 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2020年08月08日 10:37
4 リリークラウス以後この曲も秀演ぞろいですね。特にピアニストの個性があぶり出される名曲142-1だけを聞けばやはり内田光子盤に落ち着くことになるでしょうね。特に高音のタッチが鮮やかの一語です。私は良く言えば落ち着きのある, 悪く言えば平板なブレンデルやシフを横目で見ながら, リリシズムを優先してルプー盤を購入しました。当時は気にいっていましたが, 最近何となく不自然に移行する感じが気になる様になりました。本曲集は多彩なので選ぶのは本当に難しい。私としては内田光子に再録してくれればと無いものねだりをしています。
ところで昨日のドレスデンシュターツカペレの録音についてですが, モーツアルトに関してはスイトナーよりC.デイヴィスの方に私は愛着を感じます。ヨッフムのブルックナーも外せません。ライヴではザルツブルグ音楽祭での小澤征爾のブラームス第1番やギレリス&カラヤンのベートーヴェンピアノ協奏曲第3番が忘れられません。話が逸れて失礼しました。
2. Posted by 和田   2020年08月08日 12:24
ルプーは、現代の人気ピアニストの中でもリリシストとしての資質を最高度に具えたひとりにほかなりませんが、この作品を手がけた彼は、そこで自己のそうした持ち味を十二分に打ち出し、作品のふくよかな抒情に実に深く多彩なニュアンスを付与することに成功しています。
特に、ピアノの響きを柔らかく整え、入念に歌いこんでいます。
各曲とも実に美しい響きの演奏で、詩的情緒を大切にしながら、てんめんと歌わせているのが特徴です。
抒情的表現と劇的表現の幅が極めて大きく、その推移そのものがドラマティックです。
シューベルトの小品を、大きな人生を凝縮した、実に味わい深い濃密な表現のメディアとし、深い沈黙に裏打ちされた確固たるものにしたルプーにとって、この曲以上に腕を振るい得る作品はちょっと見当たりません。
この名作は、その情緒豊かで美しい外観の中にシューベルトの不安、苦悩、絶望、諦めなどをも映し出していますが、ルプーの演奏では、そうした一面もが悲しいまでに美しく表現されているのです。
自然の振る舞いを会得した、非常に魅力的な演奏です。
3. Posted by 小島晶二   2020年08月08日 22:55
追伸。お前の選択は間違っていなかったと感じさせる様なエールを送っていただき有難うございます。確かにルプーはあの髭顔からは想像できない100年にひとりのリリシストでしょう。私の好きな評論家の小林利之氏が絶賛していたことを思い出しました。他のシューベルトでは彼の18番と16番のソナタのCDも持っていますが, こちらは彼の特性が余り出ていなく多少落ちるなと思いました。即興曲はシューベルトの数多いピアノ曲の中でも突出した名曲で, その感情全てを表出する様に全8曲を納得させるのは至難の業だと思います。
4. Posted by 和田   2020年08月08日 23:16
シューベルトのピアノ曲では、ソナタ17番について村上春樹氏の本に独自の視点から迫っていて興味深いです。シューベルトにもこのような無限のエネルギーを秘めた楽曲があったのだなと何度も聴き返しました。村上氏はアンスネスを薦めています。もしよろしければ一聴ください。
そういえば先日フィッシャー=ディースカウ&ムーアのシューベルト歌曲大全集を聴こうとして途中で頓挫してしまいました。今は『魔笛』から『ドン・ジョヴァンニ』に移行し夢中になっています。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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