2010年12月20日
ムーティのヴェルディ:リゴレット(新盤)
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1994年5月のミラノ・スカラ座での公演をライヴ録音したCDである。
ムーティの2度目の全曲録音に当たるこの1組は、彼の円熟が示されている。
歌手はとても立派だ。現時点でおそらくこれ以上望みようのない最高の演唱であろう。
ブルゾンのリゴレットはこの役を歌う歴代の名歌手のなかではかなりまっとうではないかと思う。
つまりゴッビのように異常な性格でもなく、カプッチッリのように圧倒的でもない。
スタイルで大見得を切ったりスタイルで押し切ってしまうところがないので、大人しい印象を受けるかもしれない。
しかし聴き込むほど、噛みしめるほどに、ブルゾンの歌唱からは豊かな人間味が伝わってくる。
やや地味だけれど決してつくりものではないので、聴き返すたびに感動してしまう。
この円熟したブルゾンがいるからこそ、共演する2人の若者たちの新鮮な歌唱が余裕をもって楽しめるのだ。
ロストは可憐で透明な美声で端正に歌い、アラーニャは極めてスタイリッシュで小気味よく歌い、若々しく艶のある声を颯爽と響かせる。
しかし、これは歌手だけの名人芸で成り立つ《リゴレット》ではなく、ムーティの強力な指導力が前面に出た演奏だ。
時にブルゾンの歌の個性が主張を強めることがあっても、ムーティはあくまで全体がひとまとまりになったオペラ《リゴレット》像を追求する。
次はレチタティーヴォ、次はアリア、といった聴き方をしてはならないとさえ思えてくる。
悲劇はまっしぐらに進行し、ヴェルディの、もしかしたら最も力と技が充実した作品かもしれないオペラのパワーを引き出す。
鋭い劇的緊張感から繊細な響きまで多様な要素をオーケストラで雄弁に表現するさまは素晴らしくて、とてもライヴとは思えないほどの完成度。
精度に重きを置く方向もあるけれど、これはこれ。戦慄する、戦慄できる《リゴレット》だ。
ムーティはいつもの基本方針に従って歌手には慣習的なヴァリアンテではなく、ヴェルディが書いた楽譜どおりの音符を歌わせている。
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