2010年12月27日
プレヴィン&ウィーン・フィル(管弦楽版:ラヴェル編)/ブレンデル(オリジナル版)のムソルグスキー:展覧会の絵
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素朴なオリジナル版と華麗な編曲版を聴き比べる企画の面白さに惹かれるし、演奏がまた両方とも実に素晴らしい。
プレヴィンとウィーン・フィルによる管弦楽版は、ラヴェルの色彩的なオーケストレーションを生かしながら、ロシア的情感を豊かに盛り込んだ大変充実したもの。
"プレヴィンがウィーン・フィルとの演奏会でラヴェルのスコアを再現している"ということが、このディスクの1つのセールス・ポイントになっている。
しかも、ここにはライヴにありがちな演奏上の問題がほとんどない。
プレヴィンのスタイルは、どちらかといえばオーソドックスで、不要な演出はどこにも見られない。
ここでは、伝統あるオーケストラの中にひそむ近代的なフレキシビリティの存在を意識させる。
この作品は、むろん標題的な要素をはっきりともった作品なのだが、プレヴィンは、とりあえずそうした音楽外の事柄にこだわらず、スコアに書かれた音楽を純度高く演奏することにだけ没頭する。
そうした方法が、ウィーン・フィルという自発性と室内楽精神に富んだオーケストラから、演奏者同士、そして演奏者から指揮者への共感と協調に満ちた気持ちのいい音楽を紡ぎ出す。
個々の楽器の音色美、そして合奏時の全体の美しさはウィーン・フィルならでは。
こうした本質的に絶対音楽指向のアプローチながら、演奏者たちを、そしてなによりも作品そのものを強引に引っ張りまわさないプレヴィンの柔軟な音楽づくりから、自然な標題的起伏が浮かび上がる。
ピアノ版も見事で、ブレンデルは各曲の性格を的確につかみ、じっくりと運びながら、全体を精巧にまとめている。
ドイツ・オーストリア系の作曲家を得意としているブレンデルだが、この曲もコンサートでは頻繁にとりあげていた。
これは実にどっしりと落ち着いた演奏で、ロシア臭の強いリヒテルとはやや異なり、1枚1枚の絵を丹念に、まるで細密画を思わせるかのように仕上げているのが特徴だ。
〈古い城〉〈卵の殻をつけた雛鳥の踊り〉〈バーバ・ヤーガの小屋〉など、その繊細な描写力は凄いの一語に尽きる。
ブレンデルは決してピアニスティックな効果を展示しようとはせず、むしろ抑制された表現の内で彼の考えるこの作品の本質に迫ろうとする。
最強音を排した強弱のグラデーションの多様さ、常に求心的であろうとする表現は、その演奏においてあらゆる意味での押しつけがましさの要素を無縁なものとしながら、確固とした自己主張を行い、何よりも新鮮である。
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