2008年02月28日
デュ・プレ&バレンボイムのシューマン:チェロ協奏曲&サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番
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シューマンがチェロ協奏曲を作曲したのは1850年、彼の精神が変調を来たしはじめていた時期にあたる。
そのためこの作品はゆたかなメロディを流露させながらも、不気味なデーモンのささやきがそれを邪魔しにかかる。
つねに美しく歌い出そうとしながら、その歌はやるせない憂悶をおび、魔の淵を覗かせる。
デュ・プレの演奏は歌を重んじ、それをたっぷりとひびかせる。
そこにはシューマンのビーダーマイアー的な幸福感が感じとれるほどだ。
それだからわずかながらも脳に変調の予感がきざすと、すべてが暗転してしまう。
そんな幸せのなかにひそむ不安のおびえが、ゆたかな歌のなかに隠し味のように聴きとれる。
デュ・プレにとってそれは現実となった。
デュ・プレの表現意欲のすさまじさ、スケールの雄大さはとても女流とは思えず、朗々たる美音には切ないまでの憧れ心がこもっている。
フィナーレの情熱には命をかけた芸術家の姿があり、誰しも舌を巻いてしまうに違いない。
サン=サーンスの濃厚と繊細と蠱惑、悩ましいほどの表情の豊かさも見事だ。
どこまでもヴィヴィッドに魅惑的に仕上げられたデュ・プレのチェロであり、聴き手をいつの間にか虜にしてしまうような一種魔力に似た息づきがある。
彼女の曲作りはすべからく流麗と形容すべきものではあるが、そこには常に前向きな初々しい躍動感が息づいており、言い知れぬ魅力をたたえた独特の推進力がある。
ひたむきに歌い、まるで祈り訴えかけてくるかのように純粋な美を織り出してゆくその姿勢が我々の胸を打ってやまない。
表現はきわめてフレキシブル、サン=サーンスのスコアの欲するところに誠に濃やかに対応し、鮮やかに広がった音空間を醸し出している。
彼女全盛期の美質がこのコンパクトな作品の中に余すところなく盛り込まれている観。
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