2010年12月30日
アルバン・ベルクSQのヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」/第2番「ないしょの手紙」
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ヤナーチェクの死の半年前に完成し、最後の傑作となった弦楽四重奏曲第2番《ないしょの手紙》は、カミラとの出会いから、愛が芽生えて、この若い人妻へのプラトニックな愛が満たされるまでを音で書き綴った作曲者の手記のような曲である。
これをロマンティックな眼で回想的にとらえたスメタナSQ4回目の録音(1979年のライヴ)の名演も忘れ難いが、アルバン・ベルクSQがヤナーチェクの作風のなかの表現主義的な一面を前面に引き出して熱演した最新盤も、ライヴとしては最高級の録音とあいまって強烈に訴える。
《ないしょの手紙》としてはいささか雄弁すぎる表現かもしれないが、組み合わされた第1番《クロイツェル・ソナタ》の演奏はこのアルバン・ベルクSQの右に出るものはないだろう。
トルストイの禁欲主義を偽善と非難し、不倫といえども、人生にとって真実の恋に優るものはないとした内容を、表現主義のオペラのようにとらえて緻密に再現しているからだ。
すでにヤナーチェクに地方性を求めようとするのは時代遅れになっているが、秘密告白癖はそうはいかない。
鮮烈に、えぐりだすように、アルバン・ベルクSQは、ヤナーチェクの告白を響かせてしまう。
いたたまれないというか、背筋にくるというか、いささか度を越した音楽のドラマトゥルギーに拒否反応を起こすのだって、立派な聴き方ではないか。
《クロイツェル・ソナタ》も《ないしょの手紙》も、なんていやらしいんだろう、なんて露悪趣味なんだろう!
でもそう感じてしまった時、ヤナーチェクの音楽と、アルバン・ベルクSQの演奏の魔の手にとらえられてしまう怖れがある。
困ったCDというべきか。
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