2022年03月21日
徹頭徹尾トスカニーニの強靭な意志に貫かれ、すべての音に渾身の力が注がれた、激しく熱い音楽!創設2年目のNBC響と1939年に行ったベートーヴェン・チクルス
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トスカニーニが創設2年目のNBC響と1939年に行ったベートーヴェン・チクルスをまとめてCD化したもの。
NBC交響楽団はニューヨーク・フィルを退いたトスカニーニのために結成されたオーケストラで、NBC放送が当時の最高レヴェルのプレイヤーを集めて、トスカニーニの指揮芸術をラジオ放送を通じて世に広めようとしたものである。
トスカニーニは1950年代に同じNBC響を振って、ベートーヴェンの交響曲全曲を再録音しているので、その方が代表盤になってしまったが、演奏自体は問題にならぬくらい1939年盤の方が良い。
オーケストラは創立されたばかり、トスカニーニも70代に入ったばかり、その極度に結晶化された響きと気迫は「凄まじい」の一語に尽き、フルトヴェングラー盤に唯一匹敵し得るCDといえよう。
極めて力強い音楽がひしひしと伝わってくる。
徹頭徹尾トスカニーニの強靭な意志に貫かれ、すべての音に渾身の力が注がれた、激しく熱い音楽である。
ダイナミクスの幅は大きく、フォルテやアクセントが強調され、急速な楽章のクライマックスなどはまさに息をのむほどの迫力だ。
ここにはヨーロッパの伝統、ドイツ風の含みや暗さなど皆無で、すべてむき出しの音だけで勝負している。
金管とティンパニは最強奏されるが少しも粗さを見せず、時にはかなり大きなテンポの動きもあって、決して機械的な演奏ではない。
このベートーヴェン交響曲全集は後年のそれと比べて、トスカニーニのアクレッシヴで毅然としたベートーヴェンをたっぷりと聴き取ることができる。
かつてトスカニーニの指揮は、アメリカを中心に現代の演奏様式に非常な影響を及ぼしたが、ベートーヴェンの交響曲全集は、彼の芸術を代表する名演揃いである。
しかしトスカニーニの演奏は、現代の音楽学的な研究の観点から眺めると、もはや過ぎ去った時代の表現という感がないわけではない。
かつて楽譜に忠実といわれた解釈も、現在の眼で見るとそうではなく、かなりロマン的で主観的な表情や解釈をまじえている。
しかし彼の場合は、音楽が凄いほどの生命力をもっていることを、いまも高く評価せねばなるまい。
現在、トスカニーニの演奏は楽譜に忠実という意味ではなく、視点を変えて受容されることが必要な時代といえる。
これらの演奏にみなぎる極度の緊張力とカンタービレの魅力、ドイツの伝統にしばられない率直な表情などが、改めて評価されてよいのである。
ここには明快な歌と灼熱の生命力をもった音楽があるが、現在の演奏では、ベートーヴェンに必要な意志的な力が、トスカニーニほど端的に示されることが、なくなってしまった。
したがってトスカニーニの演奏は、現在では新しい意味を感じさせる。
特に奇数番の曲にトスカニーニの真骨頂があると言えるだろう。
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