2011年01月14日

フルトヴェングラーのベートーヴェン:交響曲第3番《エロイカ》(1952/12/7)/大フーガ(1954/8/30)


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この1952年12月7日のベルリンでの演奏会は、同年5月に行われたメニューインを迎えてのベルリン・フィルの定期以来、ほぼ半年ぶりのベルリン復帰であり、また心配された病気回復後の演奏会ともあって、たいへん話題となったものである。

このコンサートに足を運んだ批評家のハンス・ハインツ・シットゥッケンシュミットによれば、指揮台に現れたフルトヴェングラーは、表情や歩き方にまだ病みあがりといった雰囲気を残していたということであるが、指揮を始めると、昔ながらの魔力にみちた演奏が展開され、フルトヴェングラーの健在ぶりが確認されたということである。

しかし、健康に不安をいだき、かつ父の持病でもあった難聴の兆しをおそれ始めたのか、この《エロイカ》の演奏には気宇壮大なスケール感とほとんど隣り合わせにどこか翳りのある表現も感じられるように思われる。

十分にダイナミックで逞しく、フルトヴェングラーならではの大きな息づかいといったものが一貫して流れてはいるが、演奏にみなぎる覇気や輝きあるいは前へ前へと走りこむ推進力は従来よりいささか後退している。

むしろ、ここにはそれ以上に柔和な優しさとさらに作品のもつ深みが追究された感があり、例えば第2楽章のいわゆるフーガのよる展開へと移行する部分の重く、長い間の取り方など、虚無的なばかりの寂寥感があり、そのものいわぬ気迫に圧倒されるばかりである。

いずれにしても、この演奏は、さらに一歩深みへと到達した66歳の巨匠による感動的なライヴということができよう。

ザルツブルク音楽祭での伝説的なライヴである《大フーガ》も白熱した演奏。

強固な意志を感じさせる見事な演奏で、ディテールの味わい深さも特筆に値する。

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classicalmusic at 19:25コメント(4)ベートーヴェン | フルトヴェングラー 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2020年09月11日 09:16
4 フルトヴェングラー愛好家の和田さんがベートーヴェンの<英雄>を紹介されるとなりますと, どうしても盤の問題を尋ねない訳にはまいりません。別のウエブサイトを拝見しますと, 大学時代仲間内でかなり盤について議論なさったと伺っています。残念ながら本52年のベルリン盤は未聴ですが, 私が日本にいた頃は44年と52年のウィーン盤があり, 後者のEMI盤が万人向きの名演として推奨されていました。その後両者とも様々な復刻盤が出て訳が分からなくなり, 再発されるたびに音質がコロコロ変わると聞いています。録音を含めて何年のどの盤が良いのか察知できる範囲でお聞かせいただければ幸いです。勿論, 人それぞれ嗜好は異なるでしょうが, 知っている方の意見を聞きたいと思います。和田さんは最近フルトヴェングラーを聴かなくなったと仰っていましたが, 私も同様です。聴覚が衰えだした年齢ではモノラルの貧しい録音は煩わしく, 彼の演奏を聴き終わるとガクッと疲れるのが主因だと思います。本曲のステレオ盤ではもう古い録音になりましたが, ワルター, クーベリック, クレンペラーを好んで聞いています。バーンスタインやアバドも秀逸ですが, 原典版の繰り返しが嫌いなので殆ど聴きません。
2. Posted by 和田   2020年09月11日 13:36
フルトヴェングラーが残した十数種の「エロイカ」についてフルトヴェングラー研究会でかなり議論したことがあり、その結果ターラから出ているベルリン・フィルとの1952年12月8日のライヴ録音がベストであるとの結論で一致しました。今でもフルトヴェングラーの名盤を一つ、と言われたら、この「エロイカ」です。有機的演奏という表現がこの録音にもっともふさわしく、冒頭の二つの和音から物語が始まり、気宇壮大な展開を重ねながらロマンティックで、しかもドラマティックな音の世界が形作られていきます。聴き手はそのスタートからコーダに至るドラマを目撃するかのように演奏と対峙、あたかももう一つの人生を生き抜くかのように全曲に浸ることになります。巨匠が亡くなる2年前の録音ですが、ベルリン・フィルの統率力にも抜かりがなく、美しさもスケール感も、また表現の純度と熟成度も理想的です。演奏という行為が精神的な営みにほかならない事実を実証した名演といってもよいでしょう。確かに今ではあまりフルトヴェングラーを聴けなくなりましたが、史上最高の指揮者の一人という評価に揺るぎはありません。
3. Posted by 小島晶二   2020年09月11日 22:24
追伸。興味深い評価有難うございます。今後十分考慮させていただきます。ターラはヨッフムのブルックナー5番等の名演も有って私も好きなレーベルです。フルトヴェングラーが史上最高の指揮者の一人という思いは私も同じですが, 私の知り合いの同年代のドイツ人はカラヤンの方がダイナミックで惹かれると言っていました。それは単なる録音の差だけではと苦笑しました。確かにフルトヴェングラーの録音運の悪さは如何ともしがたいですね。
4. Posted by 和田   2020年09月11日 23:05
本当に仰る通りフルトヴェングラーの録音運の悪さはどうしようもなくて、何しろステレオ録音が始まろうとした1954年に亡くなっていますし、当の本人がセッションに積極的でなかったこともあって、遺されたライヴ録音はどれほど高音質化(リマスタリング)を重ねても、音の悪さは如何ともしがたいものがあります。同時期の他の普通の録音と比べてもなぜかフルトヴェングラーの録音は音が悪いです。スタジオ録音は特にシングルレイヤーによるSACD化によって随分聴きやすくはなりましたが、今後はブルーレイオーディオに期待しましょう。
小島さんの知り合いのドイツ人の方のご意見は興味深いですね。『フルトヴェングラーかカラヤンか』という本もあるくらいですから。そう言えばアバド時代のベルリン・フィルについても本場の人が「カラヤンの頃がダイナミックだった」と嘆いていました。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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