2011年01月26日
ギレリス&ルートヴィヒのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番&第5番「皇帝」
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ギレリスの最初の西側での録音は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲だった。
クリュイタンスとヴァンデルノートの指揮のパリ音楽院管弦楽団と第1番から第3番をモノーラルで入れたあと、ルートヴィヒ指揮フィルハーモニア管弦楽団と第4番と第5番をステレオで入れたものである。
ギレリスは、のちにセルともベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を残している。
だが、少なくとも第4番と第5番は、レオポルド・ルートヴィヒ指揮フィルハーモニア管弦楽団と入れた旧録音のほうが魅力的だ。
れっきとしたステレオ録音だが、ギレリスが西側で演奏をし始めた頃の録音であり、なによりも覇気に満ちた溌剌とした演奏が素晴らしい。
辣腕ピアニストのイメージはこの頃つくられたのであろうが、同時に爽やかな抒情味も欠いていないのは、とくに第4番では重要なポイントだ。
ギレリスに充分にソリスティックな活躍の余地を与えるルートヴィヒの指揮は、オペラで鍛えたドイツのカペルマイスターのそれで、今は貴重な記録だ。
《皇帝》も、第4番と同じく、覇気に満ちた溌剌とした表現、冴えわたるタッチと万全の指のコントロールを存分に聴かせてくれる。
のちのセルとの全集の影に忘れられてしまっては、あまりに惜しい若き日のギレリスの記念すべき演奏である。
また、この時代(1957年)のフィルハーモニア管弦楽団は、つねに安定した実力を誇り、ここでも、名匠ルートヴィヒと理想の協奏曲演奏を展開している。
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コメント一覧
1. Posted by nagai@yezo 2011年05月07日 18:56
ギレリスにはもう一つマズアとやったライブ盤が出ています。セルとやったのと違って、リヒテルの50年代をほうふつさせるような猛烈なバクエンといっていい。オケともども燃え上っています。これはギレリスのもう一つの顔を見ることができて面白い録音です。私としてはこちらのほうがいいです。(音は悪い)
たしか彼がレーニン勲章をとったときの国家記念演奏会の記録です。東側でベーとベンの権威であるマズアを招いてベー全やったそうです。
たしか彼がレーニン勲章をとったときの国家記念演奏会の記録です。東側でベーとベンの権威であるマズアを招いてベー全やったそうです。
2. Posted by 和田 2011年05月07日 19:15
その録音、持ってます。確か3番が欠けていたはずです。
あとギレリスに関して残念なのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を未完のまま亡くなってしまったことです。
あの質実剛健なタッチで、第32番を聴いてみたかったという思いが強いです。
それに比べて、コンチェルトの録音は多いですね。
カラヤンとの3番(ライヴ)は特に見事な名演でした。
あとギレリスに関して残念なのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を未完のまま亡くなってしまったことです。
あの質実剛健なタッチで、第32番を聴いてみたかったという思いが強いです。
それに比べて、コンチェルトの録音は多いですね。
カラヤンとの3番(ライヴ)は特に見事な名演でした。
3. Posted by 小島晶二 2020年09月23日 09:22

4. Posted by 和田 2020年09月23日 12:47
アナトール・ウゴルスキ。彼の「鳥のカタログ」の録音でメシアンに開眼させられました。お国物では「展覧会の絵」も個性的で素晴らしいです。ソナタ第32番については私はポゴレリチをよく取り出して聴きますが、ギレリスと同じゲンリッヒ・ネイガウス門下のヴェデルニコフも良いですよ。ギレリスの「皇帝」についてはセルとの新盤も後に取り上げますが、この若き日の録音は確かな技量のもと、その音楽性はすぐれてパワフルでありながら、内面的にも深い解釈には得がたい説得力があり、彼の魅力を十分味わうことができます。硬質な叙情性はクリスタル硝子の輝きに譬えたい気がしますが、時にボヘミアングラスのような温かみ、素朴さも随伴していることこそ、ギレリスの懐の深さの表出と思います。もっともこの頃の彼は母国旧ソヴィエトの威信を懸けた気迫に満ちた演奏を遺していますが、一方で当局からは亡命阻止のために常に監視され、また失敗は許されないという緊張感には尋常ならざるものがあったことは忘れてはなりますまい。