2011年03月20日
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」K.492 カール・ベーム指揮 ウィーン国立歌劇場日本公演 1980年 [DVD]
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ウィーン国立歌劇場の、日本での引っ越し公演(1980年)のライヴ。
ベームの残したモーツァルトのオペラのレコードは、スタジオ録音とライヴ録音とでだいぶ様相が異なる。
両者のあいだには大きな変化が生じ、ベームはまるで2つの顔をもつようだ。
ライヴでは演奏の本質はスタジオと変わりないが、聴衆の反応を感じ取ると、慎重派のベームといえども少しずつエキサイトし、用意された下書きとは違った表現が表れてくる。
ライヴ特有の多少粗削りながら音楽の流れを閉ざさないモーツァルトも素晴らしい。
このライヴ盤は、まったく予想だにしないくらい、傑出したものとなった。
1980年といえば、ベームは85歳を超えているが、ここで指揮をするベームは、信じがたいほど精気に満ちた、躍動感のある、若さほとばしるモーツァルトを形作っている。
利発で機転のきくスザンナのルチア・ポップの、絶妙なタイミングの言葉のやりとり、情感のこもるしんみりした歌、最後まで気の休まることのないこの役を、みごとにこなしている。
フィガロを演じるヘルマン・プライも、最高の相手(ポップ)に恵まれて、十二分の力を発揮。
ケルビーノのアグネス・バルツァも、2曲のアリアとも完璧な出来ばえ、歌い終わったあとの拍手の長さからみても、人気一番であったろう。
ちょっとびっくりしたのは、伯爵夫人のグンドゥラ・ヤノヴィッツだ。
レコードで聴く彼女は上品でそつが無く、静的な歌い方でハメをはずすことはないと思っていたが、どうしてどうして、ふたつの美しいアリアを十分に歌い分け、彼女一代の名唱を残した。
このときの聴衆の拍手は、この歌にどれだけ感銘したか、印象深いものであったかを物語っている。
彼女はレシタティーヴォ・セッコの部分でも意志の強さを表現し、堂々とした伯爵夫人を演じている。
脇役にまで一流どころを揃えたこの《フィガロ》は、20世紀の規範となるべき普遍性をもった演奏として、誰が聴いても納得できる夢のようなレコーディングとなった。
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