2011年03月04日
ヴァント&北ドイツ放送響のブルックナー:交響曲第6番(新盤)
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長年、ブルックナーの交響曲を指揮してきたヴァントの、揺るぎない確信が感じられる演奏である。
本拠地であるハンブルクのムジークハレでのライヴで、第6番の録音はこれで3回目となった。
ヴァントの音楽は彫りが深く、その端正な解釈は外面的効果のために曲の本質的要因を損なうことが決してない。
表情の隅々まで共感のにじみ出た第1楽章から生命力に満ちた終楽章まで、精緻なアンサンブルともども賞賛に価しよう。
自然に流れる虚飾のない構成とすっきりとした潔いリズム、そして大音量で鳴り響いていても、どこか昔をなつかしむ風情のある表情は、83歳にしてついに到達した音楽の深みといっていい。
このあたりからブルックナーは、とくにアダージョ楽章において、自然の描写、というよりは、たんなる自然の鏡のような反映の作風を、確立したように思われる。
第6番のアダージョ、すでに作曲家は第5番の真夏の盛りを越えて、秋の入り口にさしかかっているのは明らかだ。
弦楽器によるしっとりとした歌が高まっていく第2楽章のくだりは、まるで残照のよう。
ヴァントは、その美しい陽だまりの世界を、慈しむかのように、丁寧に描き出す。第2主題の柔らかい癒しには、言葉もない。
曲全体から時折、寂しげな雰囲気が漂ってくるものの、大きな起伏のあるフィナーレまでくると、いつのまにか寂寥感も癒されて、ほのぼのと温かい気持ちに包まれる。
名盤と呼べるものの少ない第6番だけに喜ばしい1枚だ。
音質は、従来CD盤からして比較的良好な音質であったが、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって、更に見違えるような鮮明な音質に生まれ変わった。
音質の鮮明さ、音場の幅広さ、そして音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、ヴァントによる至高の名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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