2011年04月05日

ケーゲルのブリテン:戦争レクイエム


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この《戦争レクイエム》の録音からほどなくして、ヘルベルト・ケーゲル(1920-90)は自殺した。

旧東独にあって果敢にも前衛作品を擁護したケーゲルが、旧東独の崩壊直後、自らの命を絶ったのは今では謎である。

小説家で自ら命を絶つのは数多けれど、指揮者でピストル自殺なんて本当に珍しいのは、おそらくこの職業が人をも恐れぬ鉄面皮でなくてはやっていけないからだと思うが、ともかくケーゲルはひどい躁鬱だったらしい。

いわば芸術的遺言となってしまったこの録音は、何らかの暗示なのだろうか?

それを汲み取れとばかりに演奏は鋭く、厳しい。

怒りに憑かれたようなこの演奏には寒気を感じるが、聴き手を滅多にない音楽体験に浸らせる。

目が血走ったような熱狂と、見るものを石に変えてしまうような冷やかさが同居し、こんな演奏が表す心象風景とはいかなる地獄図だったのかと思って、ケーゲルに共感させられてしまうのだった。

キビキビとした声楽パート、しかしヒタヒタと胸を打つ歌わせ方だ。

声楽を伴った交響作品には見事な手腕を発揮したケーゲル(マーラーやノーノの名演を聴け!)の持ち味と力量が全開した観。

名演の多い同作品だが、この演奏は「オレは命をかけたんだぜ」とばかりにニラミを利かせる。

ケーゲルは不滅だ!!

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classicalmusic at 19:16コメント(4)ブリテン | ケーゲル 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2020年11月27日 09:36
4 ケーゲルはドイツ民主共和国の崩壊と運命をともにしたと言われていますが,彼の自殺は謎と言えば謎でしょうね。生前は1980年代に来日してN響や都響を振ってくれたのを思い出しました。彼の演奏は暗くて重いですが,堂々とした迫力があり,もっと評価されていい指揮者だと感じます。<善き人のためのソナタ>というドイツ映画はご覧になりましたか。この映画を見ると旧東ドイツの音楽家の惨状に驚かされます。
2. Posted by 和田   2020年11月27日 11:43
<善き人のためのソナタ>は見てませんが、<クラシック音楽と冷戦 ~German Democratic Republic(GDR…ドイツ民主共和国=東ドイツ)の音楽家たち>も興味深いドキュメンタリー映画です。国の文化政策の中で最も収益を上げていたのがLPレコードの独占販売だったという事実は興味深いです。レコード製作会社は偶然国営になったようですが、精神的に枯渇していた国民にとってレコード鑑賞は欠かせない趣味に定着して、その影響は皮肉にも西側に及ぶことになります。制作費が安かったために西側のドイツ・グラモフォンは当初質の高い東側のアーティストの演奏を中心に提携という形で録音しましたが、国営VEB製作LP第1号がフランツ・コンヴィチュニー指揮、シュターツカペレ・ドレスデンによるベートーヴェンの『英雄』だったことも象徴的です。ドレスデンのルカ教会が教会としてよりも録音会場として大修復されるのもレコード産業の一役を担うためだったと思われます。ベルリンの壁の崩壊は東側に次々と起こりつつあった東欧革命の気運が頂点に達した時期に起こるべくして起こった事件であることは疑いなでしょう。東ドイツは経済的な破綻を国民にひた隠しにして事実を全く知らせませんでした。クルト・マズアの立場からも見えてくるように、当時の音楽家達はそれぞれの立場で抵抗し改善を要求しましたが、彼らが先頭に立って東西の統一運動を進めたわけではありませんでした。インタビューの中でも語られていますが、一般的に音楽家で積極的に政治に深く介入しようとする人は少なく、しかもオペラ・ハウスやオーケストラでは西側の団員が去った後、メンバーの大幅な補充が余儀なくされたために、彼らが演奏活動によって困窮しないだけの最低限の生活を約束されていたことも要因のひとつでしょう。話はだいぶそれましたがケーゲルの自殺は仰せの通り謎のままです。
3. Posted by 小島晶二   2020年11月27日 20:12
追伸。詳細な東ドイツ音楽界に関する情報有難うございました。同じ共産圏でも本家のロシアとはまた異なっていたことが良く分かりますし,ドレスデンシュターツカペレのあのいぶし銀の音色が長年保存されてきたのも理解出来ます。<善き人のためのソナタ>未見なら是非ビデオでいいからご覧下さい。主人公は国家保安局員の中年男とその監査対象となる若い芸術家です。後者は音楽家ではないのですが,彼のピアノ演奏が東ドイツ崩壊とともに物語の展開を大きく変えていくことになります。ラストシーンは心が震えました。
4. Posted by 和田   2020年11月27日 21:46
なるほど、最近iTunes漬けでいけませんね。小島さんご推奨の映画ということで機会があれば是非観させていただきます。
余談ですが、ポリーニのブラピアコン1,2のバックのシュターツカペレ・ドレスデン、まだまだティーレマンの棒の下、健在でした。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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