2011年04月20日

チョン・キョンファ&テンシュテットのベートーヴェン、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



ベートーヴェンは非常に遅いテンポだが、チョン・キョンファのソロには緊張感が保たれている。

音色には艶があり、響きはしなやかで、以前のような気迫は感じられないが、そのかわり一層の柔軟性が加わり、演奏が伸びやかになっている。

今ならチョン・キョンファの新盤がいちばん好きだ。それはヴァイオリンが自由闊達に弾いているのに、なおかつ自然さも獲得しているからである。

やりすぎも、踏みはずしもないのに、ひたすら聴き手の心をつかんで離さない。

第1楽章展開部後半の短調のメロディーなど、特別なことは何もせず、心をこめて弾いているだけなのに、澄みきった悲しみが切々と迫ってくる。

テンシュテットのオケも有機的だ。

まず、冒頭の静けさと第2主題の暗さ、それがおずおずと明るく変化していく提示部の美しさを聴いただけで、このオケ部分がすごいことがわかるし、ソロと絡むとき同じ気分で反応していくのには感動してしまう。

この演奏でもっともすごいと感じるのは、第2楽章かもしれない。

静謐な美しさというのはこういうものであろうか。とにかく静かなのだ。心地よい緊張感とともに、音楽がすっと心に入ってくるのである。

オケのデリカシーに満ちた伴奏も特筆ものだ。

第3楽章は、ソロ・オケともども心が弾んでいるのがよくわかる。音楽が前へ前へと流れるので、曲が短く感じられるほどだ。

でもこの楽章でも、例の「静けさ」が時折顔を出す。オーボエとソロヴァイオリンの対話もそれであり、だからこそ終結へなだれ込んでいくクレッシェンドが、こんなにも感動的なのだと思う。

ブルッフでは落ち着いた情感と強い集中力が結びついており、息の長いフレージングで丹念に演奏している。

テンシュテットも息の合った共演ぶりだ。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 18:31コメント(4)チョン・キョンファ | テンシュテット 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2020年12月12日 09:28
3 以前バルトークのヴァイオリン協奏曲の折に触れましたが,1980年代後半以後のチョンキョンファには余り魅力を感じなくなりました。さらにどうしてか本曲にだけに関してはムターやムローヴァを含めても女性ヴァイオリニストの秀演が殆んど無い様に感じます。連綿たる美音を奏でるのは女性には難しいのかも知れません。  
本演奏の第1楽章は歌に乏しい気がします。第2楽章は確かに魅力的で一場の夢の様です。でも終楽章はかなり神経質な感じがして私は余り好きではありません。テンシュテットの指揮も迫力が萎んで行く感じがします。従って,シゲティ,オイストラフ,シェリング,パールマンといった往年の名手の演奏を押しのけてまで採ることは出来ません。ブルッフの方はテンシュテットの棒がスローで大人しく,ケンペとの旧盤の生命力には及ばない気がします。全く個人的な好みですが。
2. Posted by 和田   2020年12月12日 12:02
小島さんご推奨のヴァイオリニストの中でも特にシェリング&S=イッセルシュテット盤は長い間私の愛聴盤でしたが、そのスタイルをさらに追究したのがチョン・キョンファの新盤なのだと思います。彼女はまるで禊をすませてからレコーディングに臨んだのではないか、と思わせるほどに精神的に高められたヴァイオリンを弾いており、音楽の使徒として身を捧げるような熾烈さを持っています。たった1つの音、たった1つのフレーズが魂の具現になっています。しかもそれらが透徹し切った姿で表われるのです。
もう1枚、チョンの内容表現をもっと深めたシゲティの新盤も忘れられませんが、技巧が痛々しいほど衰えているので、一般的とは言えません。
今アンダのモーツァルトのピアノ協奏曲全集を聴いている最中です。第18番の第2楽章に強く魅了されました。
3. Posted by 小島晶二   2020年12月12日 22:55
追伸。シェリングの旧盤は私もCDを持っており,その端正な美しさとあくまで古典曲としての整然とした佇まいに魅了されます。オーケストラはロンドン響ですが, イッセルシュテットのキラ光りするいぶし銀の渋さに感激しました。ハイティンクとの新盤も捨てがたい魅力があります。チョンキョンファはそれらからかなり逸脱していると思いますが,その点は評価は割れることでしょう。シゲティの技術的衰退はブラームスの協奏曲においても気になりますが,その精神性は他のヴァイオリニストでは感じられません。彼には故宇野功芳氏推奨のワルターとの旧盤がありますが,残念ながら未聴です。
余談ながら,モーツァルトのピアノ協奏曲18番は私の大好きな作品です。この曲ではぺライアやバレンボイムも素晴らしいですよ。
4. Posted by 和田   2020年12月12日 23:19
小島さんの仰るシゲティの精神性はバッハの無伴奏においてさらに透徹した世界を切り拓いているように感じます。シェリングも同様です。一般的にもこの二者のいずれかをバッハの無伴奏のベスト盤に掲げられるのも充分頷けるところです。話がそれて申し訳ありませんが、チョンは宇野功芳氏没後にバッハをリリースしましたが、果たして常々彼女を激賞していた氏がどう評価するのか訊いてみたいところです。私は感動できませんでした。
余談の返事ですが、モーツァルトのピアノ協奏曲は勿論第20番以降も秀逸揃いですが、私が好きな楽曲は10番台にひしめいているようです。小島さん最愛の曲の1つであるという第17番も好きですが、第12番、第15番あたりも若き日のモーツァルトの想いの丈が凝縮されているようで、一聴すると軽い曲かなと耳を傾けてみるとずっしりとした重みというか、作曲者自身の弾き振りを想像してしまいます。第18番のペライア、バレンボイム再度聴いてみます。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ