2011年05月11日
チョン・キョンファのツィゴイネルワイゼン(ヴァイオリン名曲集)
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
まだチョン・キョンファが若いころのライヴ映像を見たことがある。
そのとき、舞台にいたヴァイオリニストは演奏が始まると激しく弓を楽器にぶつけ、身体を揺らし、髪を振り乱し、あるいは靴で床を何度も蹴った。
演奏者の顔には歓喜、恍惚、苦痛、憂鬱、安堵と、ありとあらゆる表情が浮かんだ。
それは、まるで何かにとりつかれていたといってもよかった。
筆者は、一丁のヴァイオリンが、大ホールの空間を切り刻むような、こんな空恐ろしい迫力を持っていたのかと、心底驚いたのである。
だがその後、彼女は結婚し、2度の出産を経験してから、どうにも調子がよくない。
彼女のあの凄まじさは、やはり年齢のせいだったかとあきらめかけたころの1998年、彼女はあの激しさに、途方もなく深く大きなスケールを加えた、まったくみごとな演奏を披露してくれたのだ。
そのとき、プログラムにはバッハの「G線上のアリア」があったが、このわずか5分程度の曲がなんと繊細で微妙に変化し、瞑想的な深さをたたえていたことだろう。
しかも、その公演のあとに録音されたこのアルバムには、そのときの感動がかなりの高い割合で入っている。
冒頭の「ユモレスク」だって、始まるやいなやギクリとするなまめかしい音に、胸がキュンとなってくる。
「タランテラ」も凄まじいし、有名な「ツィゴイネルワイゼン」も、これほどこまやかな表情に彩られた演奏を筆者は知らない。
彼女の新作は、過去のほとんどすべてが、予告されながら半年から2年近く延期(ないしは中止)になっていた。
ところが、このアルバムは例外的に予告通りに出た。
ある雑誌の記事によると、チョン自身も会心作だと思っているとのことである。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。