2011年06月10日

マルケヴィチのベルリオーズ:幻想交響曲


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マルケヴィチは、20世紀の大指揮者たちのなかでも特に知匠と言えるひとりであったが、この《幻想》は、彼の知匠としての手腕が大きな成果を実現させたユニークな名演に他ならない。

これは1961年の比較的古い録音だが、ドイツ・グラモフォンのステレオ期最高の録音で、オーディオ・ファイル的魅力も充分にあろう。

これまで出た数多くの《幻想》の中で、これほど個性的でかつその表現に納得させられる演奏も少ないように思う。

たとえば、第1楽章の「恋人の主題」に入るところで、気分的に急いで激しく盛り上げ、その後テンポを落としてラグ的なリズムを強調して優雅な恋人の主題に入る。

しかし、途中で青年がためらうようにテンポを落とすが、再び激しく高揚させていく表現法は、個性的であると同時に見事である。

また、第2楽章では、ワルツに入る部分でテンポを落とし、ウィンナ・ワルツ風なリズムのとり方をしていてまことに優雅な趣がある。

このような表現が至るところに見られ、標題の内容をより具体的に提示している。

そして特筆すべきは、作曲家でもあったマルケヴィチ生来の音に対する特殊な能力とも言うべきもので、その天才性こそ、標題音楽の内容とあいまって、独特の色調で染め上げ、交響曲としての意義の乏しさを補って余りあるものにするのだ。

獲物をじっと見据えるような目と鋭い感性は、ベルリオーズの夢と覚醒の世界を、マティスの絵を思わせる、ある種のエキセントリックな色の組み合わせで描くのだ。

リアルで具体的な標題音楽であるこの交響曲を手がけたマルケヴィチは、巧妙な配慮が光るすこぶる効果的な演奏設計によって、この交響曲のドラマとしての内容を実に鮮やかにリアリゼし、聴き手を飽きさせることのない表現を聴かせている。

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classicalmusic at 05:03コメント(6)ベルリオーズ | マルケヴィチ 

コメント一覧

1. Posted by nao   2011年06月09日 11:42
5 ご紹介くださり、有難うございます。
購入して聴いてみます。
2. Posted by 和田   2011年06月09日 14:11
廃盤にならないうちに、お早めのご購入をおすすめします。
3. Posted by 小島晶二   2021年02月02日 09:30
4 本日より当方は2月丸々の夏休みに突入(時差は日本の半日遅れ), ゆったりと音楽が聴けることを願っています。
マルケヴィッチ。この孤高の指揮者はカラヤンに睨まれベルリンフィルを殆ど振ることが出来なかったせいか,判官びいきの日本人の間でもマニアは結構いる様です。彼は教育者としても優れており,サヴァリッシュ,ブロムシュテット,バレンボイムらが彼の薫陶を受けたことを失念してはならないでしょう。マルケヴィッチはスラブ系なので,私は彼のロシア音楽に強く惹かれます。特にロンドン響と録音したチャイコフスキーの悲愴が素晴らしく,フィナーレは圧巻の一言です。昔<暮らしの手帳>で名盤として推薦されたのも納得できます。本曲幻想も彼の良さが出た秀演で,演奏時間からもミュンシュとクレンペラーの中庸を行く様な演奏に感じます。でも彼の特徴はしっかりと発出されており,悲愴同様ティンパニが効果的に使われていますね。ステレオ初期にしては録音が良好ですが,管楽器と弦楽器が分離して聞こえ,別の室で演奏したものを合成したかの様な感じを受けます。楽器の特徴を際立てたいからかも知れませんが,その点は気になりました。 
余談ですが,先日の佐村河内守に関する言は記事とは関係ないコメントに向けられたもので,和田さんがお詫びすることではありません。
4. Posted by 和田   2021年02月02日 11:58
マルケヴィチが最も積極的に録音したのは1950年代から60年代にかけてで、その間この幻想交響曲とフィルハーモニア管弦楽団とのストラヴィンスキー《春の祭典》(59年EMI)、ジャン・コクトー他との《兵士の物語》(62年Ph)、ロンドン交響楽団とのチャイコフスキーの交響曲全集(62〜66年Ph)などは、作品の本質を的確に表現した強い説得力を持った演奏であり、マルケヴィチが戦後を代表する指揮者のひとりだったことを明らかにしています。
早くも余談に入りますが、あの後YouTubeで朝比奈がシカゴに行った際のライウを聴こう(これまではDVDしか持っておらずアンプに接続できなかったので)と思ったのですが、第4楽章の途中から消音になってしまっていてがっかりしました。それより検索ワードに「朝比奈」と入れると「最後」と候補が出てきたので、開いたらブル9で、これは掛け値なしに同曲最高の凄いライヴでした。ことのほかブルックナーに高い評価を得ていた朝比奈は、ブルックナー以外ではその重々しすぎる表現が作品の持ち味とそぐわないことも少なくなかったですが、素朴さと重厚さを求められるブルックナーでは、大きくプラスに働き、数多くの名演につながっていました。YouTubeでは朝比奈最後の8番ライヴも聴けますが、いずれも武骨さの中に崇高さすら感じさせる感動的な名演になっています。小島さんもこの夏休み期間に秀演を見つけられて私に教えて下さることを願っています。
5. Posted by 小島晶二   2021年02月02日 21:04
追伸。生前朝比奈氏の演奏を聞けなかったのは残念至極でした。私が日本にいる頃はさほど世間で注視されていない上,東北に在住した私にとってライヴの機会は殆どなかったと記憶しています。彼のシカゴ響とのブル5ライヴは私が離日する頃大評判になり,ビデオテープに録音しました。立派な演奏でしたが,やはり私は第2楽章はやや不満です。一方,ブル9は凄まじい快演ですが,私にはテンポがスロー過ぎると感じました。朝比奈のライヴではN響とのブル8が最も上質だと思っています。朝比奈最後のブル8大フィル盤も大人気ですが,私は未聴です。故宇野功芳氏によると前半2楽章はN響盤,第3楽章は大フィル盤が勝り,総合的には互角だとおっしゃていました。彼のブル7も素晴らしいのですが,私の嫌いなハース盤を使用しているのが残念でなりません。
6. Posted by 和田   2021年02月02日 21:29
私は朝比奈のライヴに2度接する機会に恵まれました。1つはベートーヴェンの4番と7番で、もう1つはブルックナーの8番で、いずれもオケはN響です。しかし残念ながら劣悪なNHKホールでは朝比奈の生み出す響きが腹の底までずしんとくるまでには至らず、至極残念でした。ひょっとして朝比奈は録音映えする指揮者なのかなと勘繰ったほどです。恐らくサントリーホールや大阪のザ・シンフォニーホールでは違った印象を持ったことでしょう。晩年の朝比奈の人気は日本ではものすごく、オケの団員が全員引き揚げても少なからぬファンがホールに居残り拍手とブラボーの歓声で朝比奈を呼び戻すのでした。年老いた朝比奈には気の毒な感じを受けましたが、そうした聴衆に誠実に応じる姿勢は芸術家の鑑だったと今でも感じ入ってしまいます。
余談ですが、今アダム・フィッシャーのベト全を聴いているのですが、面白いことこの上ない快演です。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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