2011年06月15日
シノーポリのシューベルト:「未完成」/メンデルスゾーン:「イタリア」
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《未完成》と《イタリア》のカップリングだが、断然すばらしいのが《未完成》。
あまりにもポピュラーでなかなか改めて聴こうという気にならない曲だが、これならば一聴に値する、独特な主張を持った極めて個性的な《未完成》である。
すべての表情がこまやかでかつ濃密、ちょっとしたルバートや弱音のニュアンスなど実に効果的で、管弦楽が声のようなふくらみと陰影を持つこともユニークである。
"思索派"のシノーポリがこの曲に何を想い描いているかといったことは、必ずしも追求しないでよい。
陶酔的と言っては語弊があるかも知れないが、この底知れぬ美しさの中に黙って身を沈めているだけで、もう充分に幸せではないか。
この交響曲は、その"未完成"であることのミステリアスさとともに、ベルツのオペレッタ《シューベルトの恋》や、ハンス・ヤーライ主演の映画『未完成交響曲』によって、あまりにも甘美なロマンティシズムによる衣装を着せられてしまったのではないだろうか。
この曲作曲時のシューベルトの梅毒の発病、貧困、それに先立つ失恋といった様々な条件は、シューベルトの心理に暗い影を落とし、その影は多くの彼の作品にも反映されていく。
深く暗い奈落の底に落ちていくような絶望、そしてその絶望の淵から仰ぎ見る手の届かぬ彼岸の幸福に対する空しく悲しい憧れ。
シノーポリのこのディスクは、この曲からそんなシューベルトの"心"を抉り出している。
《イタリア》における明るさと輝かしさはイタリア人ならではのものだが、速いテンポと遅いテンポとを大胆に対比させるなど、音楽間の明暗と対照がシノーポリの演奏の大きな特色と言える。
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