2011年10月31日
ロストロポーヴィチのショスタコーヴィチ:交響曲第5番(新盤)
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動感を強調、熱っぽく劇的に演奏しさえすれば、感情を著しく鼓舞された聴き手は、なにがなし他者との連帯が強まった思いに駆られて満足する、そんな一面が、この第5番にはあった。
雄々しさを強調したエネルギッシュな演奏がはやったのも無理はない。
もともとロストロポーヴィチは、チェリストとしても指揮者としても、いったん興に乗ると自身のはやる気持ちを抑え切れなくなる面を残していたような気がする。
だが、ここでの彼はそうではない。
全曲の中心を第3楽章ラルゴに置き、物悲しく息の長い透明なメロディを、しなやかに深々と歌い進めてゆく。
おのずから表出される切なさが、彼の円熟を物語っている。
第1楽章はことさら弱音で表出される主楽想及び副楽想が息づまるような内的緊張に支えられている。
例えば、第1楽章の中間部で、悲痛な主題が現れるところでは、テンポを落とし、弦楽器には、かすかなヴィブラートをかけ、微妙なフレージング処理により、切々と聴き手の胸に迫ってくるのである。
第2楽章も暗鬱に表現し、テンポも各部分に緩急を与えて決して速すぎない。
第3楽章はこの演奏の圧巻で、まさに心にしみ透ってくるような表情。
その抒情の表現は絶妙な陰影を伴っている。
終楽章は劇的で巨大な表現。
全4楽章を通じて、何と暗鬱な音楽を雄大なスケールで歌わせていることか。
どの部分も、作曲者と親しかったロストロポーヴィチの深い理解と共感を感じさせる素晴らしい演奏である。
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