2011年07月09日
アンチェル&チェコ・フィルのドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
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演奏は、まったく正統的であり、この作品のスタンダードとして強くお薦めできるものである。
さすがに自国作品にみせるアンチェルの指揮は、内側からの表出力を支えとした力強さがあり、他のレパートリーにはない張りと輝きがある。
もちろん、抒情的味わいも豊かだ。
不思議に素朴さといったものはあまり感じられず、ドヴォルザークが残した最高の傑作を感動的に歌いあげた気迫に圧倒される思いだ。
全体に音楽が比較的淡々とした流れを持ち、各楽想の表現が明確で、テンポの大きな揺れといった作為的な表現がなく、いわゆる直截という感じがする。
現在ではこのような演奏が多くなっているが、この演奏はそれでいてこの曲から実に豊かな情感を引き出しているのが改めて感じられ、その辺が他の同様の演奏には見られない特色で、改めて見直されてよい。
オーケストラも積極性溢れる演奏を聴かせており、ライヴ的興奮を湛えている。
この《新世界より》は、1961年の録音であるから、チェコ・フィルが完全にアンチェルの楽器として機能していた黄金時代の記録ということになる。
後年のノイマン時代、さらにはクーベリックの歴史的帰国コンサートと較べても、弦の厚みといい、アンサンブルの精度といい、オーケストラの実力は、断然上であることが分かるだろう。
1939年、ナチスがチェコに介入すると、ユダヤ人だったアンチェルは家族共々アウシュヴィッツに移送され、家族を皆殺しにされてしまった。
この世の地獄を体験しながら、その嘆きや苦しみ、あるいは憤りを微塵も演奏に反映させず、このように健全で逞しい演奏ができたアンチェルに心からの敬意を表したい。
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