2014年06月17日
シューリヒト&シュトゥットガルト放送響のブルックナー:交響曲第8番、第9番
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「第8」の演奏は、まったく奇跡的なものである。
速めのテンポこそ「第7」と共通するが、あの枯淡の境地とはまったく異なり、ここでのシューリヒトは全身を火の玉と化して、圧倒的なパワーで全曲を駆け抜ける。
第1楽章は、ひとつの細胞が誕生したように始まり、分裂と生成を繰り返しつつ、徐々に巨大な音楽に成長する。
第2楽章は、原始的な生命のリズムが鼓動し、第3楽章は天国の花園だ。
第4楽章は、疾風の勢いだ。
あたかも剣の達人が数百人の敵をなぎ倒しながら駆けるが如く。
そのエネルギーが尋常ではないのだが、決して破れかぶれではなく、常に頭脳は明晰に冴え渡っており、音楽の運びは理知的で、道を踏み間違えるときがない。
「第9」は美しい夕映えのような演奏である。
第1楽章の開始から、聴く者の魂は遥かな宇宙へと連れ去られる。
第2主題では、夕映えに照り映える水面のように、色と光を刻々と変化させ、この彼岸と此岸を行き来するような無常感は、ひとつの魂が赤々と燃えながら天に召されるようなコーダまで尽きることがない。
第2楽章は、厳しい精神の舞踏であり、第3楽章こそは、黄泉の国を逍遥する魂の歌だ。
ついに魂は、神と出会う。何という歓喜、何という安らぎ!
ブルックナーの死によって完成されなかったフィナーレでは、全能の神への賛美が、峻厳な対位法を伴って高らかに謳われるはずだったのだが……。
このような作品の本質を、これほど伝えてくれる演奏は他になく、今後もそう簡単には現れないだろう。
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