2011年08月20日
リヒテルのベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番&第31番&第32番
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わが国にデビューした当初のリヒテル(もちろん、ディスク・デビューである)は、桁違いに大きい表現力の振幅で、聴き手を圧倒していったものであった。
後期から晩年になってのリヒテルも、やはり驚くべき振幅をもった表現力を誇ってはいたものの、同時に、以前よりいっそう求心的な力強さをもった内省的な要素をあらわにしていくようになる。
1991年に録音されたベートーヴェンの後期の3曲のソナタの演奏(当時、リヒテルは76歳である)でも、そうした傾向は顕著であるといえよう。
70代後半を迎えたリヒテルが、ベートーヴェンの最後の3曲のソナタを録音したことにも、一つの意義が感じられる。
それ自体が彼のベートーヴェン演奏の集約であるということではないが、そこには、豊かなキャリアとともに到達したベートーヴェンの内面の世界への深い共感も見出せよう。
数多いリヒテルのベートーヴェン演奏の中では、ベストとして選ぶよりも、彼の活動の歴史の中の一時点を物語るものとして興味深い1枚だ。
第31番の第3楽章に聴く痛切な情感から、第32番のソナタのスケールの大きな表現力に至るまで、リヒテルが到達した音楽性の高さはすばらしい。
リヒテルの演奏の特色は、作品に内在する緊張感(別の言い方をすれば造型力)を徹底的に表出してみせることだと思うが、ここでもそれが十全に生かされている。
リヒテルの透徹した精神がベートーヴェンの貴重な精神を伝えている。
これは西側よりむしろ旧東側で練られたものではある。
しかし、そこには極限までベートーヴェンが考えた表現を聴くことができる。
その解釈は多くのことを教えてくれる。
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