2011年08月22日
マタチッチ&N響のブルックナー:交響曲第8番(1975年11月ライヴ)
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あの宇野功芳氏が マタチッチ/N響のブルックナーについて「かつてこれほどまでに熱望されたディスクがあったろうか。NHKホールに鳴り響いたマタチッチ/N響のブルックナー《第8》。それは1975年11月と1984年3月の2回あるのだが ともに世紀の名演であり 会場で耳にし 放送を聴いた人が等しく1日も早いディスク化を望んでいたのである。」と激賞していた名演の待望のCD化。
第1楽章の基本テンポは速く、余分なものなものをすべて切り捨てて、音楽の大切な核だけを素朴に描いてゆく。
まことに誠実で流れの良い演奏であり、第3主題など圧倒的なスピード感だ。
マタチッチの特徴の一つにリズミックな運びがあるが、提示部の最後が良い例である。
それはシューリヒトともヴァントともクナとも違うマタチッチ独自のスタイルだが、ともに真実のブルックナーという点で一致する。
一見何でもなく音をさばきながら、すべてに意味があり、ついにクライマックスにおける地獄の咆哮となるのだ。
スケルツォもかなり速いテンポによる武骨、豪快な指揮ぶりで、きれいごとでない野人ブルックナーの姿を伝え、音による大建築物を創造してゆく。
トリオもすっきりとした流れの中に憂愁の味を生かすが、第2部に入るやテンポを落とし、いっそう沈潜した表現を聴かせるあたりはさすがだ。
ハープのくっきりした美しさも比類がない。
アダージョからフィナーレにかけてもすばらしい音楽美を誇っており、アダージョのクライマックスの部分や、フィナーレの各部には激しいアッチェレランドが現れる。
とくに後者の提示部終わりなど凄絶さの極であり、そのままのテンポで一気に展開部を進めてゆく。
再現部にはさらに強烈な加速があり、ブルックナーを逸脱する寸前にまで達している。
いや、他の指揮者がこのような表現をしたら、音楽を破壊してしまうだろう。
そうならないところに、ブルックナーの本質をぐっとつかんで離さないマタチッチのしたたかさを見るのである。
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