2011年09月13日
アブラヴァネル&ユタ響のマーラー:交響曲全集
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昨年はマーラーの生誕150年、今年は没後100年ということでマーラー作品のリリース・ラッシュが続いている。
モーリス・アブラヴァネル指揮ユタ交響楽団の演奏によるマーラーの交響曲全集が再発されたが、これがなかなか面白いのである。
しばしば歴史的録音とはされながらも、評者の”転ばぬ先の杖”か、必ず何かしらの留保付きで語られて来た当全集、ようやく念願叶って全曲通して聴くことが出来た。
実際に触れてみると、いささかの躊躇も不要、思慮深い使命感と客観性に貫かれた、素晴らしい演奏ではないか。
確かにオーケストラのメカニカルな技量そのものを内実と切り離して”測定”すれば、超一流とは言えないに決まっていようが、要するにそれは只それだけのこと。
アブラヴァネルの深謀と熟練のタクト、それに自然に共鳴するかのようなユタ交響楽団の響き。
温かくも鄙びた魅力が細部に至るまで沁みわたっている、というだけでなく、それらが各作品の壮大な構成の中で、驚く程有機的に生かされている。
アメリカのオケらしく明るい音色だが、マーラーは暗く激しく演奏するものだという了解ができたのはバーンスタイン、テンシュテットあたりからだろうか。
ことさら悲劇性を強調しない明るく屈託のない演奏でありながら、優しさに満ちた演奏で、曲の構造もわかりやすい。
共感と慈愛に溢れてもいるが、その飄々とした味わいは、時に一方的に”感動”を煽るバーンスタイン流のアジテートとは、およそ対極にある。
その点では、表層の仕上げ方の甚だしい違いにも関わらず、あのMTTのマーラーにも通底する、ある種の遊民的な楽観性を感じさせるものかも知れない。
全集を通じての表現のスタンスの一貫性も、それこそ感動的なまでのマーラー音楽への信頼を、立派に体現している。
今更ながら、マーラー演奏の一つの原点に出会った、そんな幸福感でいっぱいだ。
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