2011年11月16日

クーベリック&ボストン響のスメタナ:わが祖国


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クーベリックは、祖国チェコへの讃歌ともいうべきこの連作交響詩を5回録音している。

中でもチェコの自由化がなった1990年の「プラハの春」音楽祭におけるチェコ・フィルとのライヴ録音は、歴史的な記録として知られているし、スメタナの没後100年を記念した1984年のバイエルン放送響とのライヴ盤も、逞しい音楽の流れと強い表出力をもった名演である。

しかし、演奏の細部まで最もバランス良く整っているのは、このボストン響との1971年のスタジオ録音であろう。

クーベリック&ボストン響盤は、チェコのローカル・カラーを充分に身に付け、しかもそれだけではないインターナショナルな感覚で、スケール大きく表現し尽くした名演である。

内容、外観ともに充実した出来ばえで、ディスクとしての完成度の高さは、このスタジオ録音盤が屈指のものといえるのかもしれない。

その演奏は、クーベリックならではの透徹した読みが細部まで的確に行きわたるとともに、きりりとひき締まった構成の中に共感ゆたかな表現がいかにもくっきりと気品高く織りなされている。

明快で誇張のない運びと全曲を通してのしなやかな起伏と緊張感もすばらしく、精緻な美しさとゆたかなスケールを見事に合わせそなえた演奏は、いかにも彫り深く新鮮である。

腰のすわった語り口で、この交響詩の魅力が的確に語られている。

演奏全体の緻密な表現や音質といったことまで含めると、やはりボストン響との演奏が最高だと思う。

脂ののりきった時期の堂々たるクーベリックの指揮、全曲を見通す揺るぎのない構成力、音楽を支える精神の強靭さと平衡感覚、そして演奏の完成度の高さとオーケストラ表現のスケールにおいて、やはりこの全曲盤には傑出したものがあると思う。

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classicalmusic at 19:54コメント(6)スメタナ | クーベリック 

コメント一覧

1. Posted by 小島晶二   2021年07月11日 09:28
4 わが祖国のベストがクーベリックかアンチェルであることは私も同感です。ボヘミア人ならではの郷愁と誇りを感じるからです。力強さと熱気のクーベリックか端正秀麗なアンチェルかと言ったところでしょうか。クーベリックには海賊盤を含めると8種のディスクがあり,どれを選ぶかは頭の痛いところですが,私としてはバイエルン響ライヴ盤を選びます。ベルリンの壁崩壊後のチェコフィルとのライヴも素晴らしいですが,やや感情入れ込み過ぎで,オーケストレーションが粗雑になってしまった感が有ります。1991年来日公演盤はモルダウだけ聴きましたが,こちらの方は逆にやや弱々しく感じます。以前LP期に試聴した記憶ではボストン響盤は録音良好でクリアですが,音色が明るすぎるせいかボヘミアの景色というより南欧の海岸風景の様に感じてしまいました。これは楽曲名に拘った偏見なので,先入観を取り払い演奏自体を評価すべきだと和田さんにお叱りを受けるかも知れませんが,標題音楽なので。
余談ですが,昔NHKで音楽ファンが選ぶクラッシックこの1曲で第1位に選ばれたのが<モルダウ(ブルタヴァ)>で,交響曲ではブラームス1番でした。評論家が取り繕った様に解説していましたが,私もモルダウは大好きで心が洗われます。
2. Posted by 和田   2021年07月11日 09:39
クーベリックの『我が祖国』は今日から何日か採り上げます。一方アンチェルがチェコ・フィルを振ったプラハ・ライヴをご存知ですか?これはソヴィエトのプラハへの軍事侵攻が始まる3か月ほど前の歴史的録音で、幸い良好なステレオ音源で残されています。当日はほぼ満席のコンサートだったにも拘わらず客席からの雑音は巧妙に抑えられて、ややドライですが濁りのないサウンドに好感が持てます。チェコ・スプラフォンからはDVDもリリースされていて、彼らの映像を鑑賞することもできますが、音質ではリマスタリングされたCDが優っています。この演奏には祖国が危機に曝されているリアルタイムの切迫感と、自由への憧れが張り詰めた緊張感の中に否応なしに感じられますし、曲目が他でもないスメタナの『我が祖国』であることも更に拍車を掛けています。しかしアンチェルは狭隘な民族主義に溺れることなく常に普遍的で、しかも高邁な精神を歌い上げているところが一層感動的です。彼によって鍛え上げられたチェコ・フィルの機動力がフルに呼応して、郷土愛を謳歌していることも特筆されます。アンチェルの表現は、各曲の持つ標題性よりはむしろ音楽の内面に光を当てているのが特徴で、スラヴ民族の血の躍動を感じさせます。ことに「シャールカ」と「ブラニーク」の2曲は、その緊迫感と吹きあげるような情熱に圧倒されてしまいます。指揮者と楽員たちとの精神的な結びつきの強さが示された名演奏です。
3. Posted by 小島晶二   2021年07月11日 10:25
68年盤の全曲は聴いていませんが,知っています。この後アンチェルのアメリカ遠征中にソ連軍の侵攻が起き,アンチェルに亡命を余儀なく強いることに成ります。一般ファンは68年のライヴ盤を挙げる人が多い様で,皆シャル―カ以降が驚異的名演と主張しています。故に本盤がクーベリックのバイエルン響盤に,63年のセッション録音がボストン響盤に対応すると感じられます。私は少年でしたので知りませんが,実はソ連侵攻の際プラハで地質学会が開催されており,日本の主要な地質家はホテルで戦車が集結する様を固唾をのんで見ていたそうです。
4. Posted by 和田   2021年07月11日 10:50
アンチェルにはさらに亡命後の赴任先、トロント交響楽団との「モルダウ」のリハーサルのモノラル録音が残されています。当時カナダではまだクラシックの商業録音が一般的ではなかったためか、アンチェルがトロント交響楽団を振った音源は量的にも少ないだけでなく、音質でもモノラル録音の貧弱なものが殆どで、彼にとっても不本意だったことが想像されます。むしろ亡命前のチェコ・フィルとの精力的な録音活動によってアンチェルの真価が発揮されていることは否めません。トロント交響楽団とのリハーサルはモノラルですが、よく聴いているとアンチェルがまずオ−ケストラに求めているのが、スコアを忠実に再現することと、アンサンブルを几帳面に整えることが理解できます。決して団員にチェコの音楽の何たるかを振りかざしたり、ボヘミア的感性を要求したりはしていません。これは彼のオ−ケストラ・ビルダーとしての基本的な姿勢と思えます。そのうえで彼ら自身から湧き上がってくる音楽性を大切にしているのではないでしょうか。
5. Posted by 小島晶二   2021年07月11日 23:14
追伸。クーベリックの演奏評価のはずがアンチェルになってしまいましたが,彼にも4種のディスク残されています。チェコフィルはノイマンの時代になって弦の合奏力が格段に落ちた。それは事務員の様な指揮者を招いたからだと,故吉田秀和氏は力説されていましたが,確かにアンチェル時代のチェコフィルの弦は素晴らしかった。これは想像ですが,プラハの春を期に相当メンバーが入れ替わったのでしょうね。アンチェルがシェフに就任したトロント響の前シェフの小澤征爾氏も同じ様に大きくメンバーを入れ替えました。
6. Posted by 和田   2021年07月11日 23:53
仰る通りで、チェコ・フィルのオーケストラとしての実力が遺憾なく示されているのもこのアンチェル時代の特徴で、彼の指揮に敏感に呼応する全体の機動力と結束にも驚かされます。2002年から2009年にかけてチェコ・スプラフォンからアンチェル、チェコ・フィルによる録音集の新規リマスタリング盤がゴールド・エディションとして全42集及び拾遺集の都合46枚のCDがリリースされました。勿論全てを聴いた訳ではありませんが、アンチェル首席時代に迎えたチェコ・フィル第二の黄金期の面目躍如の演奏が記録されています。彼らはドヴォルザークからスーク、マルティヌーやヤナーチェクに至るチェコの作曲家の作品の演奏では他の追随を許しませんが、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチなどロシア物との相性もすこぶる良いことを示しています。勿論スラヴ系以外でもモーツァルトに代表される古典から現代音楽のジャンルにおいても活躍が期待できるオーケストラでした。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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