2012年01月12日
ライナーのヴェルディ:レクイエム
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ハンガリー出身で、シカゴ響に黄金時代をもたらした名指揮者フリッツ・ライナーはRCAの専属であり、ウィーン・フィルは英デッカと専属契約を結んでいた。
この両者が、専属契約の壁を越えて共演した数枚の録音のなかでも、このヴェルディの《レクイエム》は、忘れ難い感銘を与えてくれる名盤である。
手兵のシカゴ響ではなく、ウィーン・フィルが相手だが、ライナーならではの厳しい統制が行き届いた緊張感に満ちたレクイエムとなっている。
ライナーの厳格な造型性は、恣意的な崩れを許さない。
決して感傷に陥らず、また情熱や勢いに任せることもなく、全体的に遅いテンポ(第1曲〈レクイエム・エテルナム〜キリエ〉や〈ラクリモサ〉などに特にそれが顕著)を基調として、緩急やダイナミクスを周到な手綱さばきでコントロールしながら、しかもその中に豊かなカンタービレを生かした表情あふれる音楽を繰り広げている。
イタリアの「イン・テンポ・カンタービレ」と、ライナーを始めとするハンガリー系の「イン・テンポ・カンタービレ」とは、いささか趣が異なるのだが(イタリアに比べて、ハンガリー系の「イン・テンポ」は、より推進力が強い傾向にある)、老巨匠となっていたライナーは、その厳格さのなかに、豊かなふくらみを湛えている。
彼の手兵であったシカゴ響であれば、よりリゴリスティックな音楽づくりを行なったろうが、ウィーン・フィルという自発性にあふれた音楽性をもつオーケストラは、ライナーのこの「大家のゆとり」を敏感に感じ取り、厳しさのなかの大きなカンタービレと祈りの音楽を描き上げている。
さらにそれに、豪華なソリストたち(とりわけプライスとビョルリンク)の力強い歌唱と、ウィーン・フィルの音色が華を添えている。
名指揮者ライナーの貴重なヴェルディ解釈であり、今後もその光を失わないに違いない。
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