2012年01月16日
グレングールド/バッハ・エディション
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グールドが、心と技を完全に一体化させて聴かせた最高傑作。
グールドのバッハは、誰からも栄養をもらうことなく、独自に芽を出し、花を咲かせ、さらに実までつけた奇跡の演奏である。
それは確かに研鑽の賜物であるが、余人には及びもつかない神様からの授かりものというにふさわしい水準にあり、続く世代が登頂を試みようとしても、空しく退散を余儀なくされてしまうだけである。
無機的陶酔とでもいうべきであろうか、グールドのバッハは聴き手を音の迷路へと誘い、意識を撹乱するかのような謎めいた体験に浸らせる。
聴き慣れた愛すべきバッハなどここにはなく、乾いたキーボードが1人つぶやくように音をたて、戯れているだけである。
グールドのバッハの世界とはそんな孤独を背景としており、目を楽しませる草花も、食欲をそそるご馳走も額縁の中にしまいこまれている。
それは、実生活にはなんの役にもたたぬ代物であるが、グールドの罠にはまった者には、この額縁の中の草花が本物以上に美しく、また愛おしく見える。
そして耳を傾ける度に生まれ変わるような喜びと満足感を覚え、そして時に泣くのである。
不純物は微塵もなく、それでいて人間的な息づかいはこぼれるばかりにあふれ出ている。
しかも抗し難い躍動感と神秘的な美しさがあり、聴く度に新たな感動と発見に誘われる。
バッハをピアノで弾くことなど、今後はさらに稀なことになっていくのかもしれないが、グールドのバッハはいつまでも新しく、輝き色褪せることがない。
彼の演奏は、解釈や演奏法といった領域をはるかに超えた次元でとらえられた普遍性に裏付けられているように思われる。
感謝するしかない究極の名演だ。
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