2012年02月09日

リヒターのバッハ:マタイ受難曲


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来日時のライヴを含め、我々はほぼ10年の間隔で録音された3種類のリヒター指揮による《マタイ受難曲》演奏を持っている。

だが多くの人にとって、他の2つの録音はこの最初の録音からの変化か展開でしかない。

そればかりか他の指揮者による演奏も、「リヒターとくらべ云々」というように比較の基準としてきた。

それほどまでにこの演奏は、ある年代以上のファンにとって「マタイ体験」の原点にある。

1958年、ナチの悪夢が覚めやらないのにハンガリー動乱、東西冷戦と、明日の命がどうなるかわからない状況のなかに演奏家たちはいた。

リヒターが学んだドレスデンやライプツィヒは戦禍から回復する状況ではなかった。

牧師を父にもつ彼が、時代に対して語る言葉は説教ではなく演奏である。

この演奏については、しばしば「名盤中の名盤」とか「峻厳な演奏」とされて、また「時代も変わってきているから息苦しく感じられるかもしれない」とも言われる。

それはそうであろうが、演奏スタイルという枠や趣味の線上でこの演奏は語りきれるものではない。

鋭い劇的な造形はもちろんリヒターの解釈であるが、それとともに演奏全体の異様な昂揚は、たとえば曲中で「イエスを十字架に」と唱和する民衆に、ひと昔まえに狂信的独裁者を賛美した人々を重ねあわせられる状況があってこそもたらされたのではないか。

その熱さが、人の罪とか愛の根元的な思いが、聴く者の心を貫通する。

その意味でまさに希有な、再びは登場し得ない種類の演奏である。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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