2012年03月16日
フルトヴェングラー&ベルリン・フィルのベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》(1942年ライヴ)
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フルトヴェングラーの「第9」というとまずバイロイト盤を思い起こすが、筆者はベルリン・フィルとの演奏が好きだ。
今までも何度かLPやCDになったが、音質が悪く、演奏に霞がかかったような印象であったため、正直言うと実は最近まであまり好きではなかった。
ところがメロディア盤は、ソ連軍が戦利品として持ち帰ったテープから直接音を起こしているため、考えられないくらい良好な音質である。
演奏はフルトヴェングラー56歳の時のものだけに、若々しく、アゴーギクの様相にはこの指揮者ならではのものがある。
テンポに一貫した緊迫感があり、素晴らしく生命力の横溢した表現で、創意豊かな気迫に満ちた「第9」だ。
第1楽章からティンパニの地響きのような強打と鋭いリズムが全体を支配し、それに重厚な弦楽器群が応えるあたりはすさまじいまでの迫力がある。
第2楽章に入っても、スタイルは一向に変化がなく緊張を維持し続ける。
第3楽章では一転、ゆったりとしたテンポで、あたかも止まっているかのような時の流れに身をまかせる。
そして第4楽章の始まりとともに夢は終焉を迎え、クライマックスで曲が閉じられる。
終楽章の声楽部も見事なもので、この作品の祝祭的な性格を明らかにしている。
これほど指揮者も演奏者も感情が高揚していながら、音楽的に逸脱したところがないというのは驚異的なことである。
大戦下という異常な状況のなかで、明日はもう演奏できないかもしれない、聴けないかもしれないという一種の極限状態を作り出し、一期一会の名演を生み出したのだろう。
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